人気エリアの実家、「再建築不可物件」の可能性は?
さらに深刻な問題として、土地が公道に面していないケースが考えられます。
住宅を新築する際は、行政担当部署に「建築確認」の届出を行い、承認を得ないと工事が始められません。建築確認では、建物面積に対する容積率・建蔽率のほか、敷地が幅員4m以上の道路(公道や一部の私道)に面しているかどうかも見られます。親世代が実家を新築した時代はこれらのチェックが曖昧でしたが、現代は厳格化されたため、法的に認められた道路に土地が面していないと新築はできません。
不動産業界ではこういった不動産を「再建築不可物件」と呼び、相場の2割減~半額程度の安価で取引を行っています。再建築不可物件は、近年急激に都市化が進んだエリアの片隅にひっそりと佇んでいます。
たとえば中央区月島・勝どきの路地裏、新宿区四谷の小規模スナック街、港区麻布十番の商店街裏通りなどです。こういったエリアは行政機関や大手ゼネコンの再開発事業計画が拡大すれば地価が一気に高騰しますので、それまでの間は賃貸運営などで温存所有し、機が熟すのを待つという手もあります。
地方都市はともかく、「過疎地」になってしまうと…
進学や就職で都市部に定着する一方、地方に暮らす親の相続が発生した際のことも考えておく必要があります。
地方といっても、JR在来線や新幹線も利用できる地方拠点都市の不動産であれば、賃貸経営や売却は容易ですが、問題は、鉄道路線が延びておらず、バス便運行も朝晩に数往復程度、農協直営のスーパーマーケットはあるもののコンビニや薬局はなく、見わたす限り田畑や森林が広がっているような、わいゆる「過疎エリア」です。
いくら土地面積が広大でも、利便性が低い地域の土地取引価格は安価になるケースが圧倒的ですし、建物も築年数が経っていれば評価額は0円です。建物の躯体がしっかりしていれば、リフォームして賃貸運用する手もありますが、コンビニもない場所で賃貸需要が見込めるかどうかという問題があります。だからといって無人放置しておけば廃墟化が進んでしまいます。
全国の地方都市起こっている「空き家問題」は、こういった経緯で増えています。建物を解体して更地として売り出しても、購入者がいつ現れるかわかりません。
実家が「農家」の場合に留意すべき点
生活利便性の低さに輪をかけてさらに処分困難なのは「市街化調整区域」です。なぜなら、市街化調整区域にある土地には原則として農業従事者しか住宅を建てられないからです。そして、農業関連以外の建物を新築する場合は厳しい制約があります。不動産評価も田畑扱いのため、高値では売り出せません。
とくに実家が農業、あるいは元農家だった場合は、実家の土地が何かしらの制限を受けていないか、事前に行政窓口等で調べておく必要があります。
「親が健在なうちに情報共有」を心がけて
都会も田舎も関係なく、不動産を相続する際には、親のきょうだいやこれまで交流のなかった遠い親族までもが、必要以上に関わってくる可能性があります。それに加えて、これまで問題なく暮らしていた実家が、じつは親のものではなかった(=不動産の登記名義がすでに死亡した祖父・祖母のままになっていた)というケースも多々あります。
万一の際、このようなトラブルにたじろがないためにも、親が健在なうちに所有財産の所在や登記状況などについて話し合い、資産情報を共有しておいた方が賢明だといえます。
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