5000万年前から農業を営み、抗生物質を作りながら持続的生活を送っているハキリアリをご存じでしょうか。人類の何倍もの年月をかけて社会ルールを作ってきたハキリアリに人間は何を学ぶべきでしょうか。本連載は株式会社Smashの佐野敏哉氏がいまデジタルマーケティングの現場で何が起きているか、分かりやすくレポートする「サブスク新時代のリテンションマーケティング」の特別編をお届けします。

人類の何倍もの年月をかけて作った社会ルール

③真社会性という概念

 

 

このハキリアリのことを知り、真社会性という言葉をはじめて耳にしました。

 

意味としては、「動物の示す社会性のうち高度に分化が進んだもので、集団の中に不妊の階級を持つのが特徴」というものになります。

 

加えて、Wikipediaからの抜粋には、

 

・共同して子の保護が行われる
・繁殖の分業、特に不妊の個体が繁殖個体を助けること
・少なくとも親子二世代が共存、子の世代が巣内の労働をする程度に成長するまで共存する

 

の定義が加わります。

 

ここで、不妊や子育ての話をするとややこしくなるので、その部分は割愛しますが、見方を変えると、今の世の中、何人かの起業家によって社会が形成されていて、産業やビジネスを作るものと、それを支え発展させるものの2つに分けられるようにも思えます。これが正しいか間違っているのかは、分かりませんが、アリの世界ではこのように進化を遂げてきたそうです。

 

真社会性という言葉の意味は、高度な分化が進んだという意味があります。ただ、これは人間とは大きく異なるという文章が多くの書物には書かれていましたが、見方を変えれば、近からず遠からずといった考えではないかと考えています。もし、その真社会性というものが進むのであれば、今以上にハキリアリを参考にする部分は増えてくるのではないでしょうか。

 

④定年によるジョブチェンジ

 

ハキリアリの社会では仕事が細分化され分担が決まっていると前述しましたが、その仕事が変わる瞬間があり、それは年齢によるものになります。

 

ハキリアリの寿命は半年から3年と幅がありますが、寿命が残り半分以下になると、人間は老後をのんびり過ごしますが、ハキリアリの世界ではゴミ出しやガードマンなどの危険な仕事にアサインされるようになります。ゴミ出しは、病原菌が潜んでいる危険性があり、ハキリアリの世界では死亡率が高いことから危険な仕事に分類されます。

 

また、ガードマンはアリたちに卵を植え付ける蝿から守るために、日夜戦っています。若いアリたちは巣の中の卵の移動や餌やりなど安全な仕事をし、年寄アリは、外にでて危険な仕事をする。普通に考えたら子孫繁栄の観点からは正しい選択肢なのかもしれません。

 

今の日本は80歳近い方たちが政治を動かしたり、会社の要職につき、高い報酬を手にしていたり、社会組織の代謝の悪さを痛感しています。一方で、危険な仕事は若い人たちが担っていることが多く見受けられます。

 

全てをハキリアリみたいにとまでは思いませんが、年配の方たちは、これから社会を作っていく若者にその場所を譲り、サポートするようにしてみてはどうでしょうか? このままでは、人間界の繁栄は短命に終わってしまうかもしれません。自分も3月に起業をしましたが、社長は20代の若者に委ねてみました。「人間はアリじゃない」と賛否があるかと思いますが、この判断にアリの生き方が幾分かは影響したのは確かです。

 

⑤ハキリアリの統率されたコロニーにいるのは雌だけだった

 

最後に、今まで紹介したハキリアリの世界では雄は、ほんの一瞬しか存在しません。女王アリがある瞬間に産むアリが100対のアベックのような形で雄と雌のアリを産み、このアリたちは、産まれてすぐ羽アリとなり空中で交尾をし、そのまま雄アリは死んで地面に落ちていきます。そして、受精した雌アリが、また新しいコロニーでいちから巣を作っていきます。

 

ハキリアリの世界では交尾以外で雄を必要としません。社会性がとれた組織をつくるには、実は雄は不要な生物なのかもしれません。人間界では女性の登用や活躍が期待されているが、人間も女性に全てを任せたほうが統制のとれた社会が築けるのかもしれないと考えてしまいます。

 

はっきり言えるのは、人類は誕生してたった3万年になります。それと比較し、ハキリアリは5000万年前から存在しています。生物の進化としては大先輩であり、ハキリアリは人類の何倍もの年月をかけて進化し社会ルールを作ってきたことだけは確かです。

 

ビジネスマンの方も、ぜひ一度ハキリアリの生き方に目を止めてみると、いろいろなものが見えてくるかと思います。

 

佐野 敏哉
株式会社Smash

 

 

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