運転免許証を持っていたら、裏面を見てみましょう。そこに丸印を書いている人は、どのくらいいるでしょうか。自分の想いを運転免許証の裏面に記すだけで、救えるかもしれない命があります。今回は「臓器提供・移植」について見ていきます。

臓器提供後進国という日本の現状

希望者15万60人に対し、希望が叶ったのは318人。この数字何かというと、2020年、臓器移植希望登録者(年末ベース)に対して、実際に移植が行われた件数です(公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク調べ)。

 

臓器別に移植希望者を見ていくと、腎臓が一番多く1万3000人強。心臓、肺、肝臓と続きます。移植を待ち望み、そして実現する。その数はたった2%。これが日本の移植医療の実情です(図表1)。

 

出所:公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク資料より作成
出所:公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク資料より作成

 

一方で、日本では臓器移植は大きな進展を見せてきました。1997年、心停止後に加え脳死下での臓器移植を言及する「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が施行。2009年には、同法が改正され、本人の書面による意思表示がなくても、拒否の意向がなければ、家族の承諾による脳死下での臓器提供が可能になり、また臓器提供が可能な対象年齢も引き下げられました。

 

公益社団法人 日本臓器移植ネットワークによると、1995年の臓器提供件数は86件(移植件数161件)、2009年は104件(移植件数173件)だったのに対し、2010年は227件(移植件数334件)と、制度の改正により飛躍的に伸びています。

 

出所:公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク資料より作成
[図表2]臓器提供・移植の推移 出所:公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク資料より作成

 

しかし世界的に見ても、日本は臓器提供の件数が非常に少ないという状況です。たとえば2016年の腎移植に限ってみると、メキシコ79件、スペイン64件、米国62件、オランダ59件、フランス54件、韓国43件に対して、日本は13件。また同年の腎移植について、献腎移植と生体腎移植の割合を前出の国と比較して見ると、6ヵ国のなかで最も生体腎移植の割合が多いのはメキシコで71%。日本はさらに上回り89%。法整備は進んだものの、まだ国際的にも実績に乏しい、といえる現状です。

 

待っている人がいる…(※画像はイメージです/PIXTA)
待っている人がいる…(※画像はイメージです/PIXTA)

日本人は臓器移植をどう思っているのか?

内閣府が平成29年に行った『移植医療に関する世論調査』を見ていきましょう。

 

■臓器移植に対する関心度

関心がある…56.4%

関心がない…43.6%

 

■臓器提供に関する意思表示方法の認知度

医療保険の被保険者証の裏面の臓器提供意思表示欄…50.2%

運転免許証の裏面の臓器提供意思表示欄…50.0%

臓器提供意思表示カード…39.1%

いずれも知らない…17.7%

 

■臓器提供の意思の記入状況

記入している…12.7%

記入していない…85.2%

 

■ 家族と臓器移植の話をしたことがあるか

話をしたことがある…35.4%

話をしたことがない…64.2%

 

■脳死または心停止下で臓器提供の意思

提供したい…41.9%

提供したくない…21.6%

 

■家族が脳死または心停止下で提供意思を表示していた場合の対応

意志を尊重する…87.4%

意志を尊重しない…8.3%

 

■家族が脳死または心停止下で提供の意思表示をしていなかった場合の対応

臓器提供に承諾する…38.7%

承諾しない…49.1%

わからない…12.2%

 

■どのような情報があったら良いか

臓器移植の安全性など移植医療の情報…37.3%

臓器移植に要する費用などの情報…31.9%

臓器移植の実施状況…30.9%

臓器提供を行ったドナー及びその家族の気持ちなどの情報…27.6%

 

人の生死が関わることなので、さまざまな考えがあるでしょう。それ以前に、認知・関心が高いとはいえず、臓器提供の意志を示している人はわずか、10人に1人ほど。まずは問題を知らしめること、知ることが、「移植実現率2%」という数字をあげる第一歩になります。

 

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