一般人の「医学的なコロナ対策」…急増する「民間検査」の実力

新型コロナウイルスのワクチン接種は遅々として進まない。現状では今夏の大流行(第4波)が避けられないどころか、今冬には第5波が到来しかねない。ワクチン接種が受けられない今、一般人にとって医学的なコロナ感染予防策とは何か。現役医師の上昌広氏が、最新の研究にもとづき報道からは見えない実態を緊急レポートする。

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先進国のワクチン接種数は「日本が最下位」

新型コロナウイルス(以下コロナ)の感染が拡大している。コロナは夏場にかけて流行するので、このまま第4波へと発展する可能性が高い。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

コロナの流行をくい止めるには、ワクチン接種を進め、集団免疫を獲得するしかない。図表はG7諸国のワクチン接種数を示している。日本が、先進国でもっとも接種が進んでいないことがわかる。

 

医療ガバナンス研究所 山下えりか 参照:Our World in Data/7日間移動平均
[図表]G7における人口10万人あたりの新規ワクチン接種数 医療ガバナンス研究所 山下えりか
参照:Our World in Data/7日間移動平均

 

格差は益々拡大しつつある。4月5日、『ワシントン・ポスト』などの米国主要メディアは、週末の4月3日の土曜日に、過去最大の約400万人にワクチンを接種したと報じた。

 

4月5日現在の日本の累積ワクチン接種回数は119万6,884回で、この日の接種数は10万186回だ。米国の40分の1だ。このペースでは年内に接種を完了できない。集団免疫がなければ、コロナは流行を繰り返す。夏場の第4波はもちろん、このままでは今冬に第5波を経験するのは避けられそうにない。

接種が遅い現状、喫緊の課題は「検査体制の強化」

では、日本は何をすべきか。できることからするしかない。それは徹底的な検査だ。この意味で、最近、興味深いニュースがあった。それはプロ野球選手のコロナ感染だ。

 

4月3日、読売巨人軍は複数の選手がコロナに感染していたことを公表した。選手やスタッフ101人を対象とした定期的PCR検査で判明したらしい。筆者は、このニュースを聞いて、日本のコロナ対策が前進していることを実感した。本稿では、日本で進行中の検査体制強化の実態をご紹介しよう。

 

感染症対策の基本は検査と隔離だ。変異株が急拡大しているのに、ワクチン接種が進まない日本では検査体制の強化は喫緊の課題だ。

 

コロナ対策での世界標準は週に2回の検査だ。東京五輪は、国際オリンピック委員会(IOC)と日本オリンピック委員会(JOC)が合意して、大会関係者は最低4日に一度の検査が義務付けられているが、これは世界標準を踏襲したものだ。東京五輪には世界中から選手・スタッフが参加する。検査体制は、世界のコンセンサスを反映したものになっている。

 

このようなコンセンサスが世界で確立されたのは昨夏だ。欧米の学校の新年度が始まるにあたり、どの程度の頻度で検査が必要か、議論が進んだ。

 

PCR検査の問題は、感染初期には体内のウイルス量が少なく、あやまって陰性(偽陰性)を示すことだ。ただ、感染初期の患者は排出するウイルス量が少なく、偽陰性となっても周囲にうつすことは考えにくい。どの程度の間隔で検査すればいいのだろうか。

医学研究の結果、世界は「PCR検査の繰り返し」を推奨

医学研究で重要なのはエビデンスだ。この点については、米ジョンズ・ホプキンス大学は、昨年5月、コロナに暴露された日のPCR検査の感度は0%だが、4日後に62%、7日後に80%に上昇すると報告した。検査を繰り返すことで、感染者を見落とさず、早期に診断できることがわかる。

 

昨年7月、世界の主要科学誌、医学誌の論考が変わった。経済破綻を避けるため、緊急事態宣言はもう出せないからだ。そこで、最先端の科学を活用し、合理的に対応しようとした。

 

英科学誌『ネイチャー』は7月9日号に「コロナウイルスの検査は感度より頻度が重要」、7月17日号に「検査の時」、米『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』は7月22日号に「米国でのCovid-19診断テストの迅速な拡大」という記事を掲載した。いずれも、PCR検査の感度に限界があることを踏まえて、検査を繰り返すことを推奨している。

 

実社会でも、このような医学研究の成果の導入が進んだ。米プロバスケットボールリーグ(NBL)は毎日、野球のメジャーリーグ(MLB)は隔日、サッカーの英プレミアリーグと独ブンデスリーガは週に2回、PCR検査を受けることが義務づけられた。

 

米国の大学では秋からの再開にあたり、検査を義務づけた。マサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバード大学、ウェルズリー大学などはブロード・インスティテュートに週に2回サンプルを送って検査することとなった。

 

日本は対照的だった。厚労省や周辺の専門家は「PCRは偽陽性が多い」や「PCRを増やせば、医療が崩壊する」と主張し、検査を抑制した。第3波真っ最中の昨年12月の人口10万人あたりの検査数は、日本は1,007件で、G7諸国で最下位だった。韓国(2,040件)の約半分である。

 

これは皆さんが抱く印象と違うだろう。日本政府は繰り返し、PCR検査体制を強化すると言い続けてきた。3月5日、菅義偉首相は「市中感染を探知するため、無症状者のモニタリング検査を今後、大都市でも規模を拡大して実施する」ことを表明した。1日1万件を目指すらしい。ただ、この程度、検査を増やしても焼け石に水だ。欧米は勿論、韓国にも及ばない。

唖然…感染拡大をもたらした厚労省の「抵抗」

厚労省が主導して、保健所と地方衛生研究所を中心に実施する検査を「行政検査」と言う。現在、医療機関で実施されているPCR検査も、医療機関が都道府県からの委託を受けて実施する形をとっており、行政検査の一つだ。

 

知人の厚労省関係者は「行政検査の拡大を主張しても、実現することはないでしょう。厚労省は検査を拡大する気がないからです」という。この人物は、その理由として「感染研と保健所に大規模な検査を遂行する実力はなく、検査拡大を認めれば、彼らの情報や予算の独占体制が崩壊するから」という。

 

にわかには信じがたい理由だが、厚労省のこれまでの行動を見れば、納得せざるを得ない。世界でPCR検査拡大が議論されていた昨年7月16日、コロナ感染症対策分科会は「無症状の人を公費で検査しない」と取りまとめている。それは翌日、政府が「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定する予定だったからだ。その中にPCRの拡大、感染症法の改正などが入っていた。

 

このときは、専門家が反対したため、検査対象は拡大されなかった。私が知る限り、このような対応をしたのは日本だけだ。

 

無症状者の中には医療機関や介護施設の従事者などのエッセンシャル・ワーカーが含まれる。コロナ流行下でも働き、社会を維持する人は優先的に検査を受ける権利があるはずだが、厚労省や専門家たちは一顧だにしなかった。これが現在の医療機関や介護施設での、集団感染の増加に繋がっている。

 

厚労省の抵抗はこれだけではない。エッセンシャル・ワーカーなどの無症状者へのPCR検査は、今年1月の感染症法改正にも盛り込まれなかった。この結果、感染症法で検査を受ける権利が保障されているのは、現在も感染疑いと濃厚接触者だけである。菅総理が打ち上げたモニタリング検査は、補助金による予算措置で、誰を対象とするかは官僚の差配に任される。

 

この結果、日本政府の対応はダブルスタンダードとなった。東京五輪関係者は4日に1回の検査の機会が提供されるのに、エッセンシャル・ワーカーを含め国民が検査を受ける権利は保障されない。

圧倒的に安い「民間検査」で感染リスクを低減

この状況で期待すべきは民間検査だ。急速に拡大しつつある。その嚆矢は、木下工務店が12月4日に新橋駅前にオープンした「新型コロナPCR検査センター」だ。ウェブで予約すれば、検査センターを訪問して唾液を採取するだけで、翌日にはメールで結果が届く。当初、一回の費用は3,190円だった。

 

その後、同様の検査センターは全国で続々と立ち上がった。新規事業者の参入は、この業界に競争をもたらした。4月1日、「新型コロナPCR検査センター」は来店した場合の検査価格を2,300円、団体検査を1,900円に値下げした。さらに、医療や介護従事者の場合は1,650円だ。これなら、個人や職場で負担可能だ。ちなみに、クリニックで行政検査としてPCR検査をした場合の保険点数1800点(1万8,000円)とは比べものにならない。

 

持病を抱える人や、彼らと同居する家族、あるいは彼らと一緒に働く同僚はコロナ感染が気になるだろう。重症化しやすい人にうつしたくない。このようなサービスを活用すれば、感染リスクを低減することができる。週に2回検査して月の費用は1万8,400円だ。4人家族で73,600円である。安くはないが、家族や仲間をコロナから守るための「保険料」と考えれば、考慮に値するだろう。

 

本来、このような費用こそ、政府が助成すべきだ。助成の条件として、検査センターに対しては、検査の精度管理について情報公開を義務付ければいいし、利用者には、検査結果を厚労省あるいは感染研に提供することを条件とすれば、効率よくデータを収集できる。もし、国に検査結果を報告したくなければ、自費で払えばいい。

 

これは予算規模的にも十分に実現が可能だ。仮に一人あたり1,000円を助成するとすれば、東京都の場合、必要な予算は毎月約1,000億円だ。年間1.2兆円である。前述したように1回あたり1万8,000円もする行政検査を拡大するより、はるかに費用対効果は高い。感染の早期診断、流行の実態の把握、さらに住民の不安緩和への効果を期待すれば、最優先すべき施策だろう。ただ、政府は動かない。

 

それなら、政府に頼らず、我々が動くしかない。民間主導の検査を活用し、感染を予防しながら、社会活動を継続しようではないか。

 

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所理事長

 

 

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内科医
医療ガバナンス研究所理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。

著者紹介

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