妻はなるべく働いて「自分の年金を増やす」ことが大事
それだけではありません。当然、健康保険の被保険者になれば、傷病手当金も付きます。厚生年金への加入によって、65歳以降の老齢厚生年金も加算されていきます。
仮に54歳で正社員採用され、60歳まで6年間、厚生年金に加入したことによる老齢厚生年金の加算額は、約8万円です。今後、給与が増えたり勤続年数が延びたりすれば、さらに年金額が増えていきます。
年金はもらうものではなく、つくるものです。「もらうもの」と思えば、扶養のまま保険料を払わずにもらったほうが得だと考えてしまいがちですが、「つくる」となると考え方が変わります。年金は、自分が働くことで増やすことができるのです。
確かに、会社員の扶養の妻は、税金も社会保険も優遇されています。しかし、それは育児や介護などの事情で働けない環境にいる人のために設けられている仕組みであり、最低保障に過ぎません。
夫の扶養範囲にこだわらずに、働けるだけ働くことをお勧めします。
定年後の「年金額」は自分で調べて把握しておくこと!
50代になると近い将来、自分が受け取る年金の額が、徐々に気になってきます。正確に、自分がどの程度の年金を受給できるのか、ご存知でしょうか。
なんとなく「20万円くらい?」って思っていませんか。
親がすでに年金を受給していて、おおよその受給額をそれとなく聞いている人は、自分も同じくらい受け取れると思っているでしょうが、残念ながら違います。
「所得代替率」ってご存知ですか。これは、年金を受け取り始める時点の年金額が、現役時代の手取り収入額に対して、どのくらいの割合になるのかを示すものです。ちなみに手取り収入額にはボーナスの金額も含まれています。
これ、国が発表しているモデルケースで62.7%です。つまり給料が毎月手取りで45万円だった人が受け取れる年金の額は28万2150円です。
実は、この「モデルケース」というのが曲者です。モデルケースは代替率が最も高く出るもので、それは何かというと、「夫は年収が平均500万円程度の会社員で40年間厚生年金保険料を納めていて、妻は40年間専業主婦」という条件を満たした場合、62.7%という所得代替率が適用されます。
でも、よく考えてみてください。いまの時代、妻が40年間も専業主婦であり続けられる家庭ってあるでしょうか。もしくは夫が40年間、会社員であり続けられるケースだって、徐々に少なくなりつつあるかも知れません。要するに、モデルケースが浮世離れしている恐れがあるのです。
たとえば、夫婦が40年間共働きだった世帯の所得代替率は50%程度です。シングル男性で給料が高い人になると、所得代替率は50%を切ります。「率」で見た場合、世帯ごとの働き方、家族構成によって、現役時代に受け取っていた給料に対する年金の額は、大きく違ってくるのです。
「こういう人って多いだろうな~」と思うのが、雑誌や本を読んで、自分が定年後に受け取る年金はこのくらいと思い込んでいて、現実に直面したとき、あまりの少なさに呆然自失するケースです。
筆者もときどき寄稿したり、インタビューを受けたりしているので、何とも心苦しいのですが、雑誌などはスペースの関係もあって端折った書き方になっていますし、一人ひとりの事例を事細かに分けて書くわけにもいかず、どうしてもモデルケースですべてを語ってしまいがちです。
だから、雑誌や本に書かれている数字を鵜呑みにするわけにはいきません。あなたが定年になったとき、いくら受け取れるのかを自身で把握する必要があります。
山中 伸枝
株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役
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