こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

三つの素養「自発性」「相互理解」「共好」が重要

デジタル社会で求められる三つの素養─「自発性」「相互理解」「共好」

 

デジタル社会を生きるためには、次に挙げる三つの素養が必要になると私は考えています。それは何かを成し遂げるために自分の心の中に必要とされる要素です。最初に断っておきますが、この三つは他人と比較して優劣をつけるものではありません。

 

まず一つ目は「自発性」です。これは、誰かに命令されたり指示されたりするのを待つことなく、自分自身で能動的にこの世界を理解し、何が問題なのか、私たちに何ができるかということを考えることです。

 

二つ目は「相互理解」です。これは、問題解決に至るまでの過程で他人とシェアすることを厭わず、同時に他人からシェアされたものに耳を傾けることです。文化や分野、業界、年齢などは、私たちがお互いに協力する上でのハードルとはなりません。むしろ、多種多様の異なる人たちとシェアし合い、相互理解し合うことを厭わないことが大切です。

 

ひとくちに「相互理解」と言っても、自分の価値観を服従を迫るような感じで他人に押しつけるような方法もあるでしょう。あるいは、自分の価値観を放棄して相手に迎合するようなこともあるでしょう。しかし、こうしたやり方の相互理解では、長期にわたって良い関係を保ち続けていくことはできません。

 

相互理解とは、お互いの立場あるいは人生の経験がまったく異なる私たちが、いかにして相手と共通の価値を見つけ出して、それを共有できるかどうかということです。そのため、持続可能であるかどうかが非常に重要となります。

 

問題に直面したときに逃げることなく、直視して解決する努力をすることが「自発性」です。その問題解決のプロセスにおいて、自分と異なる考えや立場の人との接触を恐れない姿勢、これが「相互理解」です。

 

三つ目の条件は「共好」です。お互いに交流し共通の価値を探し出すことを、中国語で「共好」と言います。これはもともとアメリカ・インディアンの「共同で仕事をする」という意味の「Gung Ho」の発音を中国語化したものです。相互理解のプロセスにおいて、相手には相手の価値観があり、自分には自分の価値観があります。それを常に頭の片隅に置いて、どうやって皆が受け入れることのできる価値観を見つけ出せるのかを考えながら共同で作業する。それが「共好」です。

 

この「自発性」「相互理解」「共好」の三つの条件が素養の核となるものですが、それぞれの条件の下には、様々な異なる側面があります。たとえば、先ほどからお伝えしているプログラミング思考は、科学技術を使い、より多くの人と、より多くの方法で、より正確に相互理解できるようにすることです。これは素養の核となる条件の一つである「相互理解」が持つ別の側面です。

 

 

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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