手放したら二度と入手できない「超一等地にある親の家」の活用

今回は、二度と入手できない「超一等地にある親の家」の活用法を見ていきます。※本連載は、「マンション評価ナビ」の企画・運営を手がける株式会社風の代表取締役、大久保恭子氏の著書、『どうする?親の家の空き家問題』(主婦の友社)の中から一部を抜粋し、空き家になった親の家への対処法を紹介します。

護国寺駅徒歩5分、相続税評価額1億7000万円

ご主人のお父さまが3年前に94歳で、お母さまが1年前に93歳で亡くなられ、嫁いで以来ずっと二世帯同居していた家の相続が生じた宮田由紀子さん(仮名60歳)の事例です。

 

ご両親の家は東京都の護国寺駅徒歩5分の一等地で、土地の広さは約90坪です。100年以上前に建てられた由緒ある家です。その家を亡くなったお父さまが50年前に購入なさったとのこと。相続税評価額はなんと1億7000万円。推定売却相場価格は、4億円は下回らない額です。

 

いったん手放してしまえば、二度と手に入らない歴史的価値の高い土地なので、何とか持ち続ける方法はないのか? 幸いご主人は、主にビルやマンションの設計を手がける設計事務所の経営者。仕事柄マンションの経営コンサルタントを手がける公認会計士のアドバイスを受けることができ、賃貸マンション経営という事業アイデアが浮上したのです。

3億7000万円を借り入れて賃貸マンション経営を開始

相続後1年を経て、思い出のある家を取り壊し、新たに総戸数35戸のマンションを建設し、賃貸経営するという一大事業に踏み出したのです。家の思い出としてあえて残したのは、鬼瓦が2枚。新たに造られたマンションの庭に置かれています。

 

建設資金は銀行ローンでほぼ調達しました。その額3.7億円。会計事務所からの後押しもあって、ようやく下りたローンだったそうです。

 

マンションは平成27年3月に完成しました。家賃は9万~16万円、間取は1K(25.05㎡)~1LDK(41.81㎡)。周囲には大学が多いという立地特性から、学生や夫婦2人の小家族を対象とした造りになっています。入居者募集を始めて1カ月足らずで、ほとんどの部屋に借り手がつきました。マンションの1階にはこれまで大塚にあったご主人の設計事務所が入居。ここが、管理人室的な機能も果たします。また宮田さんも、週2回のゴミ出しや週3回の共用スペースの掃除を自ら行います。入居者募集、家賃の回収、入退去の管理などの対応は管理会社に任せていますが、少しでも経費を節減できるよう、できることは自分たちでやる、という考えからです。

 

宮田さん夫婦は現在、板橋の一戸建てに住んでいます。賃貸マンションのオーナーは最上階に住むことが多いので、なぜ?と尋ねたところ、少しでも多くの家賃収入の機会を得たいから、との答えでした。地に足のついた賃貸マンション経営者です。

賃貸不動産経営を成功させる「5つ」の必要条件

この実例をもとに、親の家に新たにアパートやマンションを建てて経営するための必要条件は次の5つだと考えます。

 

1.この土地を何としても手放したくないという熱意

この土地を有効に活用して保有し続けたい!という、まず熱意あってのものです。

 

2.経営者としての資質や経験

アパート、マンション経営は、少なくとも数億円を投資し、十数年以上かけて回収するという長期的視点で事業収支を組み立てることが求められます。借り手の確保、建物の維持管理、収益管理等々、常に経営者としてマネジメントする必要があります。

 

3.不動産ビジネスについての知見

アパートやマンションは不動産です。不動産市場についてよく知っていなければ、経営しているアパートやマンションの商品力が高いのか低いのかすらわかりません。

 

4.資金調達力

アパートやマンションの建設資金は銀行ローンで調達し、家賃収入で返済するというのが一般的なビジネスモデルです。投資資金が回収できるという判断なしには、銀行は融資をしてくれない、という厳しい現実があります。

 

5.きょうだい間での納得のいく親の家の相続分割

アパート、マンション経営ができる土地は一等地です。そして一等地の価値は高く評価され、高額で売却されます。さっさと売って現金化し分割したい子、この土地は手放したくない子、というように親の土地をどうするかについて、きょうだい間でなかなか意見が一致しません。その場合、土地を手放したくない子がほかのきょうだいの相続分を現金で払う。払えないなら、最終的に売却して分配するしかありません。

株式会社風 代表取締役

「マンション評価ナビ」の企画・運営を手がける株式会社風の代表取締役。
1979年、リクルート入社。週間住宅情報編集長、執行役員等を務める。日立キャピタル業務役員、日本住宅ローン取締役を経て、2005年、株式会社風の代表取締役就任。一般財団法人住まいづくりナビセンター理事を兼務。その他、国土交通省社会資本整備審議会建築分科会委員、東京都住宅政策審議会委員などの公職を歴任。
主な著書に、『マンション選びは「立地」がすべて』(河出書房新社)、『お片付けは「家ロジ」で。』(講談社)などがある。

著者紹介

連載賃貸?売却?空き家になった「親の家」の活用術

本連載は、2015年8月31日刊行の書籍『どうする? 親の家の空き家問題』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

どうする? 親の家の空き家問題

どうする? 親の家の空き家問題

大久保 恭子

主婦の友社

空き家対策特別措置法施行により、親の家を空き家で放置することがますます大きな問題に! 今や親が残してくれた空き家は国民的問題。空き家の数は過去最高の820万戸。環境悪化や倒壊など、空き家の長期放置がもたらす外部不…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧