相手の目線で考えれば、相手の意図が見えてくるかも
筆者は常々「相手の立場に立って考える」ことが重要だと思っています。「優しい気持ちで」という意味ではなく、文字通り「自分が相手の立場だったら、なにを考えるだろう」を考える、ということです。
「ライバルがいちばん嫌がることはなんだろう?」
「どういう陳列だと客が衝動買いをするだろう?」
といったことを、ライバルや客の目線で考えるわけです。
「もし自分が、相談者たちに最適な保険商品を無料で調査・情報提供し続けたらどうなる?」
と考えてみればいいでしょう。
「そんなことをすれば、労が多いだけで収入が得られず、飢え死にしてしまうのでは?」
ということに気づけば、相談員が、どこからどういった収入を得ているのか想像がつくというものです。
「自分が証券会社の経営者だと仮定しよう。無料で株式投資セミナーを開催して顧客に様々な情報を提供するとしよう。さて、純粋に客の利益や幸福を願ってそのセミナーを開催するだろうか? よほどの大口客なら、日ごろの感謝を込めて情報提供するかもしれないが、小口客や初見の相手に対してなら…」
といったことを考えてみるわけです。
余談ですが、この思考術は詐欺の撃退にも有効です。「自分が必ず儲かる投資商品を持っていたとして、見知らぬ人にわざわざ電話をかけてまで売るだろうか?」と考えれば、いま自分の目の前にいる人がどういう人か、容易に想像がつくはずです。
病気診断や相続手続き…「有料情報」ならではの価値
無料の情報がこれほどまでに氾濫しているにもかかわらず、世の中には有料の情報もたくさんあります。あふれるほど無料情報があるのに、わざわざ料金を支払って有料の情報を得る必要があるのだろうか、と思うかもしれませんが、そこには「公平中立なプロの意見が聞ける」というメリット、あるいは「分業だから致し方ない」という理由があります。
保険への加入を迷っているとき、あるいは老後資金の運用に悩んでいるときに、プロの意見を聞くのは大変有益でしょう。しかし、無料の情報を利用すると、前述のように「タダほど高いものはない」になりかねません。
そこで、「あなたのアドバイスを下さい。あなたから商品は一切買いませんが、相談料を払いますから、お願いします」といえる相手を探すわけです。それなら相手も本当にいい商品、本当に客に必要な商品をアドバイスしてくれる可能性が高いはずです。
もうひとつは「分業」です。病気にかかったときに自分で医学書を調べるよりも、医者に診察してもらったほうがはるかに正確ですし、安心です。そのために診療費がかかりますが、それは分業しているわけですから仕方ありませんね。
筆者は経済学を学生に教えて大学から給料を受け取り、農家が作った野菜を有料で購入して食べ、医師の診察サービスを有料で購入して治療を受ける、という分業をしているわけです。全部自分でやったら大変ですから(笑)。
また、筆者は父の相続の際、面倒な手続き一切を信託銀行にお願いしました。そのときに担当者から言われた言葉は、今も耳に残っています。
「一生に1度か2度しか起こらないことのために、面倒な手続きを調べて不慣れなことをするのは大変です。私は毎日やっていますから、手慣れた作業です。それなら、私に人件費プラスわずかな利益をお支払いいただいても、お客様のためだと思いますよ」
私が定年になって「ボケ防止のために相続手続きを調べるのも悪くない」と思っていたなら頼まなかったでしょうが、まだ現役だったので、頼んでよかったと思っています。
今回は以上です。なお、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。
塚崎 公義
経済評論家
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】