「ファンド・オブ・ファンズ」とは、複数の投資信託をパッケージにした投資信託のことで、1つのファンドに投資することで実質的に複数の投資信託に分散投資できます。今回は、この「ファンド・オブ・ファンズ」の長所と短所について解説します。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『オルタナティブ投資入門―ヘッジファンドのすべて』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「ファンド・オブ・ファンズ」の短所3つ

ファンド・オブ・ファンズの短所は、第1に透明性である。数々のヘッジファンド破綻や、機関投資家の本格参入を機に、ヘッジファンド・マネジャーの投資家向け情報開示姿勢は急速に改善してきたが、運用の性格も影響して、必ずしも十分とはいえない。

 

投資戦略によっては、

 

①マーケット・インパクトを通じたパフォーマンス悪化を懸念して情報開示を躊躇するケース

②際限ない情報開示要求がインフラ整備を通じたコスト増加とパフォーマンス悪化につながると懸念するケース

 

が多い。従来の、説明責任よりも結果責任というマネジャーの意識はずいぶん改善されてきたが、それでも優良マネジャーをめぐる投資家やファンド・オブ・ファンズ・マネジャーの争奪戦は激化しており、自信のあるマネジャーほど売り手市場である。

 

しかし、ファンド・オブ・ファンズの中には、シングル・マネジャーとの格別な関係を背景に、突っ込んだ情報開示を受け、投資家に対しても一定の条件の下でその情報を開示する場合もある。

 

第2の短所は、流動性である。ファンド・オブ・ファンズの投資先であるシングル・ファンド以上の解約条件を得ることはそもそも不可能であることを思えば、流動性の不足は容易に類推できるだろう。

 

さらに言えば、優良なシングル・ファンドほど流動性が厳しくなる傾向にあるため、期待リターンを高める努力と流動性改善の努力は、えてして相反する傾向にある。

 

流動性(解約条件)を優先してファンド・オブ・ファンズを選別投資した結果、本来期待したリターンを得ることができなかったという本末転倒のケースが、特に流動性を重視するわが国金融機関の間で過去に散見された。

 

かつて、シングル・マネジャーと密接な関係を有するファンド・オブ・ファンズ・マネジャーの中には、サイドレターなどで優遇条件を得ているケースもあったが、公平性の確保という観点では、マネージド・アカウント等を利用する仕組みをとらない限り困難である。

 

第3の短所は、コストである。シングル・ファンドで管理報酬と成功報酬が課された上に、2階に当たるファンド・オブ・ファンズでも別途運用報酬が徴求されるからである。

 

したがって、ファンド・オブ・ファンズによって得られる長所(付加価値)に見合うコストであると判断できる水準か、ゲートキーパーへのアウトソースを行わないで自らヘッジファンド・ポートフォリオ運営を行う場合と比べて合理的か、という観点から検討する必要がある。

 

 

山内 英貴

株式会社GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO

 

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