贈与税には1年間で110万円の基礎控除額が定められています。この制度を活用し「誕生日プレゼントと称して毎年110万円を子に渡す」といった生前贈与が相続対策として人気を集めていますが、思わぬ落とし穴が潜んでいることをご存じでしょうか。

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現金贈与を「手渡し」でするのはリスク

現金の贈与を行う場合には、手渡しにするのはやめましょう。手渡しだと実際にどれくらいの金額の贈与があったのか、客観的に証明するものがないため、税務署からしつこく追及されることになりかねません。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

あとあと痛くもない腹を探られないためにも、必ず口座振り込みにするなど、証拠が残るようにしておくとよいでしょう。

 

また、贈与が成立するかどうかは、贈与税を払う・払わないにかかわらず、あげる側ともらう側の合意ができていることが大前提になります。そして、あげた以上は、もらった人が自由に使えるようになっていなければなりません。そのため、印鑑や通帳は必ず贈与を受けた人が持って管理するようにしましょう。

 

贈与した相手が未成年者で、自ら印鑑や通帳の管理ができない場合には、その子の親権者が持つということで、税務署からの追及を逃れることができます。

教育資金の一括贈与の特例…1,500万まで非課税だが

贈与の話が出てきたところで、時限立法で実施されている「教育資金の一括贈与の特例」についても少し触れておきましょう。これは両親や祖父母などが30歳未満の子や孫に教育資金を一括で贈与しても一定額までは贈与税を非課税とするというものです。

 

この特例は2013年に新たに創設された制度で、当初は2013年4月1日から2015年12月31日までの期限付きの特例でしたが、あまりの人気に政府が適用期間を延長し、2021年3月31日までの贈与について適用できる規定となっています。非課税となる金額は1,500万円までで、利用したい人は信託会社(信託銀行)、銀行など、および証券会社で申し込みができます。

 

具体的には、両親や祖父母(直系尊属)が、30歳未満の子や孫(受贈者)の教育資金に充てるために、前述の金融機関との契約に基づいて、

 

①信託受益権を付与された場合

②書面による贈与で取得した金銭を銀行などに預け入れた場合

③書面による贈与で取得した金銭等で有価証券を購入した場合

 

のいずれかの場合において、これらの信託受益権や金銭などのうち1,500万円までの金額については、金融機関を経由して教育資金非課税申告書を所轄税務署へ提出することにより、贈与税が非課税となります(平成31年4月1日以後の贈与については、契約期間中に贈与者が死亡した場合、一定の場合を除き相続開始時の残高が相続財産に加算されることになったため、適用時は注意が必要です)。

 

その後、受贈者が30歳に達して教育資金口座の契約が終了した場合には、その契約終了日に贈与があったとされ、その残高に対して贈与税が課税されることとなります(平成31年の税制改正で例外規定が設けられました)。

 

1,500万円まで非課税で贈与できるという点ではありがたい制度といえますが、仮に贈与を受ける側の子や孫が学校嫌いで上級学校に進学しなかったり、逆に成績優秀で特待生になったりして贈与したお金を使い切らなかった場合には、その子が30歳になった時点で残った金額に贈与税が課税されてしまいます。この特例を活用する場合には、その子の将来の教育計画をきちんと考えて実行することが必要です。

 

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相続税の税務調査を 完璧に切り抜ける方法[改訂二版]

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服部 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

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