アパートの建築で日々の生活が苦しくなっては本末転倒
相続対策のポイント 収益性を確保する
実際に相続対策を構築していく上での考え方、手法をご紹介していきます。
私がお客様によくお話しすることがあります。それは、「相続税対策の前に、所得対策、つまり現状の生活を維持するための所得の確保、キャッシュフローをしっかりと確立させてください」ということです。
わかりやすく例え話で解説いたしましょう。所得対策はスポーツでいえばボクシング。1ラウンドでノックアウトされたら、それでおしまいとなるように、日々のお金がショートしてしまったら、そこからの生活は成り立ちません。一方、相続税対策は野球にたとえられます。9回裏2アウトでも逆転可能なように、やり方によっては、人生の最終で巻き返すことも可能なのです。
たとえば、賃貸物件を建てれば、相続税評価減にはつながりますが、その後も月々のローンの返済、固定資産税の負担、10数年後の修繕に対する積み立てなど、さまざまな負担がつきまといます。相続発生時のための対策を優先したがために、そこで日々の生活の収支が回らなくなってしまっては、意味がありません。
だからこそ、相続対策においても「収益の確保」を優先すべきなのです。ですから、すでに指摘したように、「相続税対策なので、儲からなくていいのです」賃貸経営を勧める業者がそんなふうにうそぶいたとしても、決して真に受けないでください。
所得対策が大前提であることに加え、なんのために、誰のために相続対策をするのか。冷静に考えていただきたいのです。相続対策で賃貸アパートを建て、利益はトントンだったけれど、相続税は減額できた。百歩譲ってそこまではいいとしても、遺産分割をする際に"儲からないアパート"を誰が相続したいでしょうか。
相続対策は次世代になるべく多くの財産を遺すためにほかなりません。つまり、相続税を払う時だけのためだけでなく、相続人の生活の糧にならないといけない。かえって重荷になったのでは本末転倒です。そして、納税のために資産全部を売却せざるをえない事態に陥らないよう、その資金対策のためにも収益をしっかり上げていかねばならないのです。