「物納」のハードルが上がったことも理由のひとつ
また、相続税を、土地や家といったモノで支払う"物納"の条件が厳しくなったことも、収益確保を重視する理由の一つです。正確にいえば、相続税の現金納付が困難な場合は、まず延納(分割払い)、それでもムリな場合に物納が認められるという基本は変わりありませんが、平成18年の税制改正において、延納、物納を申請する際の条件が厳格化されました。
その条件は、「金銭納付を困難とする理由書」が必要となることです。内容は、相続した財産はもちろん、相続人の財産も換金した上での現金納付が義務付けられ、遺された相続人家族の生活費でさえも、3人家族で月額19万円しか考慮してもらえないというもの。
かなり厳しい条件です。ただし、念のために申し上げると、物納の手段がまったくないというわけではありません。「相続したその不動産の物納でしか納税できない状況を作りあげること」で、物納を可能とする方法は存在します。
たとえば、収入も資産もない孫を養子縁組します。その孫に対し、その物納予定地で相続税の納税ができるように、他の不動産と併せて相続させます。その際、物納予定地以外の不動産は「物納不適格財産」にするといった、ひと工夫が必要になります。
具体的には、抵当権がついている不動産を相続させる、あるいは共有不動産の持ち分を相続させるといった手法を使います。そうすれば、収入のないこの孫は、物納予定地でしか納税ができなくなるため、物納が可能となるというわけです。当然、生前に確定測量を終わらせておくなどの事前準備も重要です。
私どもは、この手法を「戦略的物納」と呼んでいますが、事前に入念な準備をしておかない限り、そのハードルはかなり高いといっていいでしょう。だからこそ、賃貸経営をするならば、現実的に物納は不可という大前提で「きちんと現金を生んでくれるアパート」を目指すことが大事なのです。