米ハーバード大学は、「オルタナティブ投資」を積極化
米国屈指のハーバード大学といえば、元大統領のバラク・オバマ氏、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、日本の第126代天皇后である雅子妃など、海外・国内の著名人が通った名門私立大学として有名だ。それに加えて、驚異の運用実績を誇る優良機関投資家でもある。
このハーバード大学の基金を運用する「ハーバード・マネジメント・カンパニー(HMC)」は、1974年に設立。卒業生、有名人、企業などからの寄付金、大学運営資金、金融資産などを運用し、将来の世代の教育・研究費を維持・拡大していくための財政的な資源を確保することを使命としている。そして、中長期的なリターンを目指し、リスクを管理し、分散投資を行っている。
設立以来の年率リターンは約11%に上り、これまで合計で約350億ドルを大学に拠出してきた。そして現在は、年間運営費の3分の1以上を賄っている。また、2020年6月30日までの2020会計年度のリターンは7.3%、20億ドルを拠出し、運用残高は419億ドルに達した。ちなみに内訳は、【図表2】の通りである。
上場株式のアロケーション(割合)が18.9%を占め、リターンは12.2%。プライベート・エクイティ(未公開株)のアロケーションが23.0%で、リターンが11.6%。ヘッジ・ファンドのアロケーションは36.4%で、リターンは7.9%。債券・物価連動債のアロケーションは5.1%で、リターンは8.2%だった。
一方で、不動産のアロケーションが7.1%で、リターンがマイナス0.5%。天然資源・商品のアロケーションが2.6%で、リターンがマイナス6.2%。その他の現物資産のアロケーションが1.3%で、リターンがマイナス17.5%。そして、現金・その他のアロケーションは5.6%となっている。
ハーバード大学は、組織のリストラクチャリング(再構築)を推進し、一部運用を外部委託しているなかで、ポートフォリオの組成・組み替えをする予定だ。具体的には、プライベート・エクイティ、ヘッジファンドなどオルタナティブ投資を増やす半面、流動性の低い資産を減らしていく方針だ。
また、天然資源・商品部門をソラム・パートナーズ社として分離・独立させ、同時に50%の株を第三者の投資家に売却し、農業・食品業界への投資を行うことを明らかにしている。
さらに、2020年春には、温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までにネットゼロとすることを公約し、政府によるパリ協定への一段のコミットメント支持、温室効果ガス削減技術の開発、他の投資・運用業界の協力などを求めて、目標の達成を目指している。
ハーバード大学基金を運用するHMCの最高経営責任者(CEO)のN.P.ナーベカー氏は、「まだ実現すべき課題は残っているものの、初期の兆候は勇気づけられるものであり、進むべき方向性に自信を持ち続けるものだ」と説明した。
同氏は、2016年12月にHMCに加わる前は、コロンビア大学、ペンシルベニア大学で投資戦略責任者を担当。その前は、J.P.モルガンで株式デリバティブ(金融派生商品)のマネージングディレクターを務めた。
このように、専門家に任せて資産運用を図り、投資収益を目指す海外の一流大学が実施している方針は、日本の大学にとっても役立つ戦略といえるだろう。
髙橋 文行
池田 祐美
くにうみAI証券株式会社
オルタナティブ・インベストメントプロダクト部
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