水回りの原状回復義務①…キッチンの場合
【Q7】シンクの汚れ、蛇口のサビは?
こまめに掃除をしていなかったせいか、シンクの水アカが取れなくなってしまいました。水道の蛇口にもサビが出てきています。換気扇の掃除も年に1度程度しか行っておらず、かなり油分がこびりついています。
【A7】通常は借主負担
前述の「窓の結露」と同様に、借主が日常の手入れを怠った結果の汚れ(カビ、サビ、水アカ、油汚れなど)は、借主が原状回復義務を負うことになります。ただしこういった汚れは、退去後に専門業者が行う清掃でほとんどきれいになります。一般的な賃貸借契約では、退去時の清掃費用は室内の汚れ具合に関わらず借主が負担するものとされています。
【Q8】キッチン・床のキズ、水漏れ跡…原状回復の義務があるのは?
調理中に包丁を床(フローリング)に落として、床板に大きなキズを付けてしまいました。その他、冷蔵庫から漏水していることに長い間気づかず、漏れた水分で床材が腐っている部分があります。
【A8】借主の不注意・手入れ不足はいずれも借主負担
借主の不注意で床材にキズを付けてしまった場合は、原状回復義務が発生します。この場合、床全面の張替えではなく、部分補修費用の負担となります。冷蔵庫や洗濯機など家電の水漏れによる床材の劣化も同様です。借主の不注意・手入れ不足はいずれも借主が原状回復義務を負うことになります。
水回りの原状回復義務②…バス・トイレの場合
【Q9】浴槽にこびりついた汚れ…原状回復の義務があるのは?
バスルームで髪を染めていたら、誤って染髪剤を浴槽に落としてしまい、浴槽の底全体が染髪剤の色に染まってしまいました。強力洗浄剤を使って掃除をしましたが、汚れはまったく落ちませんでした。
【A9】浴槽が設置後20年以上経過しているなら、大家と折半できるかも
過去の裁判事例で、「設置後20年を経過しているものの、借主の不注意により汚れが落ちなくなった浴槽を交換せざるを得なくなった場合、その費用は貸主と借主で折半する」という判決が出ています。
【Q10】壊れたまま放置した便座…原状回復の義務があるのは?
ずいぶん前にトイレの便座が割れてしまいましたが、テープなどで補強してそのまま使っていました。
【A9】基本は大家だが、放置してほかに不具合が生じたらその限りにあらず
トイレにも経年劣化が認められます。とくに便座は古くなると割れやすくなるので、借主が原状回復義務を負うことはありません。ただ、長い間放置して他の部分(便座の取り付け金具)などに不具合が出てしまうと、場合によっては便器自体の新規交換が必要になるケースもあります。退去時まで放置せず、便座が割れた段階で貸主に交換をお願いしましょう。
借主の原状回復義務は、入居後6年でほぼ消滅する
賃貸住宅における借主の原状回復義務は、入居後6年でほぼ消滅するということはあまり知られていません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、「(室内設備の)償却年数は6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を描いて経過年数により借主の負担を決定する」としています。
つまり、入居年数が経つにつれて借主の原状回復負担割合はどんどん減少していくということです。通常の生活をしていれば、退去時にかかる原状回復費用は清掃費だけです。ただ、1年から2年の短期間で退去した場合はそれなりの原状回復費用がかかってしまいますから、6年以上入居し続けた方が賢明なのです。
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