「中卒両親の子供が難関大合格!?」という不可解な反応
あるバラエティ番組で「中卒両親から生まれた東大生はいるか?」という切り口で、制作ディレクターが取材して、それをスタジオでタレントが観覧してコメントするというものがありました。
数々の東大生に質問するも見つからず、やはりいないと思ったそのとき、両親が出来婚で高校を中退したという東大生をようやく一人発見した、という内容でした。
私はこの切り口に違和感を覚えました。私の両親は高校入学すらしていません。それからすると、医師になった私は特異なのでしょうか? そもそも親に学歴がないと子供は医学部に合格できないのでしょうか?
「勉強時間を制するものが、医学部合格を制す」
親の所得で子供の学歴に差が生じることはよく知られている事実です。考えてみれば当然の話で、所得によっては費用を用意できず、十分な教育を受けられないからです。その点で言うと、私の両親は中卒ながら公務員の給与水準より上だったことが幸いでした。欲しい参考書は買ってもらえまし、塾にも通わせてもらえました。しかしそれでも、海外留学や私立中高一貫の難関校への進学などは頭の片隅にさえなかったようです。
公立の小中高に通い、医学部に合格するためには、やはり勉強時間を確保することが必須となってきます。少なくとも私が医学部に進学したいという強い気持ちを持っていたことが前提にあります。
時間のコントロールを制すれば、たとえ両親が中卒でも、地方都市でも、公立学校でも、医学部合格は可能です。私が実践済みです。
両親は自営業でしたので、土日も仕事でほとんど旅行に行った記憶はありません。しかし、よく自己分析をしてみると、それがよかったのだと思います。
なぜ、旅行に行けない環境が「よかった」と言えるのか。それはリフレッシュの仕方に制限があったからです。丸々1~2日間、家族でどこかへ行って、勉強時間をロスすることがなかったからです。
「目標平均時間」を設定してコツコツ勉強
ここからは私が実践していた「時間の使い方」を説明します。
私は、常に「勉強時間の平均」を意識しました。毎日、ノートに何時間、どの教科を勉強したのかをノートにつけていました。
学生はよく「メリハリをつけた勉強を」と言われるでしょう。私も1日の中でのメリハリは必要だと思いますが、日によって勉強が長かったり短かったりする「日にちごとのメリハリ」は、勉強時間の平均値を下げる最大の要因になってしまうのでよくないと考えています。
平日1日に3時間の勉強することは、誰にとっても、あまり苦ではないと思います。しかし平日、それも学校終業後に8時間も勉強するとなれば結構頑張らないとできません。
たとえば、週末とハッピーマンデーの祝日を利用して2泊3日の家族旅行が計画されていたとしましょう。そのため、前日の木曜日に頑張って8時間勉強したとします。
この場合、4日間の平均勉強時間は【(8+0+0+0)時間÷4日】なので、結局1日あたり平均3時間と短くなってしまいます。旅行前日にすごく苦労して8時間勉強したのに、1日平均にするとたったの3時間です。
私はこういったメリハリよりも、毎日コツコツ頑張るために「平均」を意識しました。平日の目標を「1日5時間」とするならば、余裕を持って、6時間くらいを設定するのです。
目標平均時間を設定したら、平均を下回る日を極力つくらないことが重要となってきます。もし何らかの原因で勉強時間が短くなった日があれば、その減少分をさらにプラスして次の日以降に振り分けていました。
たとえば「1日6時間」と設定していて、1日だけ勉強できなかった場合、次の日以降に1時間ずつプラスして【(6+6+0+7+7+7)÷6=5時間/日】という具合です。
5時間や6時間勉強することはある程度の努力で持続可能でも、1日は24時間しかないうえ、学校の授業もありますから、もし7時間勉強しようとすると、かなりのしんどさが待っています。相当辛い思いを3日分続けなければ取り返せません。だからこそ「平均」で考えることが大切なのです。
オリンピック選手が「トレーニングを1日の休むと取り戻すのに2週間かかる」と言っていることと感覚は近いと思います。
「早朝に勉強時間を確保すべき」これだけの理由
他にも、勉強時間を「朝」に設定していました。朝であれば静かで誘惑もありません。テレビ番組もテレフォンショッピングくらいで、受験生が好む面白い番組はやっていません。友達とメールや電話もできません。
もし何らかの事情があって朝に勉強ができなかった場合には、夜を使えば良いというリスクヘッジも可能です。ただしこれは最悪のリスクヘッジですので、基本的には朝方に大半を終えるようにしていました。
また、朝といっても6時とか7時ではありません。4時間の勉強時間を確保するなら、遅くても4時には起きないとダメなのです。厳しいと感じるかもしれませんが、朝に勉強を終えておけば、夜は好きなことをする時間を作れますし、家族と団欒する時間も確保できました。
そして1日の最後に「自分へのご褒美」を決めていました。そこでリフレッシュしたり、思春期なりの生きがいを感じたりしていたのです。
両親のIQや学歴などはまったく関係ない
これまで見てきたように、「①平均で考える」「②朝早く起きる」「③自分へのご褒美」というこの3つが私の時間の使い方です。
医学部に入ってから初めてわかったこと、感じたことは「元来の天才はごく少数」ということです。生まれに関係なく、皆それなりに努力をしてきたからこそ医学部に入れたのだと実感しました。
私は国家試験模試で全国30位、学年3位の成績で卒業しました。この経験は、結果が出るか否かは本人の努力次第であり、両親のIQや学歴などはまったく関係ないということを証明しています。
もしわが子を医学部に行かせたいと思うのであれば、親の頭脳がずばぬけていない限りは子供も先が見えている…などとは考えないことが重要です。
医学部に合格するということは、理系の勉強界で(マイナー競技の)オリンピック選手になることと同じだと考えています。
世界で金メダルを獲得するには、努力だけでなく、天性の才能が必要になるかもしれません。私が成しえなかった主席での医学部卒業は、まさに天性のものが必要だったのでしょう。しかし、国内選抜は必ず努力で突破できるのです。親が先に諦めることなく、子供の未来を開かせて欲しいと思います。
鈴木 幹啓
すずきこどもクリニック 院長