こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

政策立案、政策遂行で政府が行うべきこと

私の執務室に飾ってある額は、額装書画普及研究会のメンバーから寄贈されたものですが、この研究会ではだいたい八十代から九十代の人たちが若い人たちと一緒になって共同でイノベーションを行っています。

 

高齢者にできる仕事を、それまで彼らが行ってきたものとは違う職業に結びつける必要はないと思います。確かにシルバーの人々が得意なことと、社会が求めている仕事の間には差異があるかもしれません。それを埋めるために学び直しをしてもらう必要もあるかもしれません。しかし、その一方で、社会の側もシルバーの人たちの得意なことを生かそうとする視点を持つべきだと思うのです。

 

つまり、年配者の得意なことと社会のニーズの中間地点を作ることができないかについて考える必要があると思うのです。これは、新しい社会的役割や職業を生み出すことに等しいイノベーションであり、非常に重要なことです。

 

若者と年配者はそれぞれ異なる角度からの見方を持っています。その見方を結合させたやり方の一つが、最近コロナ渦の経済対策として台湾で発行された振興三倍券です。この施策を設計するとき、紙のチケットとして振興券がほしいのであれば紙でもらえばいいし、クレジットカードを使い慣れているならカードに情報を載せて使えるようにしました。実際、両者が選択された割合は半々ぐらいです。

 

この振興券を作るとき、若者と年配者が共同でアイデアを出す場がなければ、どちらか一方のやり方だけになって、残り半分は置き去りにされていたかもしれません。これは絶対に看過できないことです。

 

重要なのは、「どうすれば、各世代が一緒に政策を作っていくことができるか」を考えることです。政府はその上でまとまった意見を吸い上げればいいわけです。

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

 

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン

プレジデント社

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