「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

課税事業者になるかならないかは大きな違い

このしくみには、不公平な側面があることは否いなめません。消費税を支払っている人たちは、そのお金が国や地方にまわると考えているのに、お金の流れは違っていますからね。

 

さらに、事業の種類によっても不公平感はあるでしょう。消費税の課税事業者の判定は売上規模によってなされますが、業種によって利益率が異なるからです。

 

私のようにひとりでフリーライターをしていれば、あまり必要経費はかかりませんから、売上の多くは手元に残ります。ということは、売上を1000万円以下に抑えながらも十分に生活できるということです。

 

逆に、利益率の低い商売、たとえば飲食業は、仕入れや店舗家賃などの必要経費がかかりますから、こうした経費に見合う売上を上げなくてはなりません。すると自然と売上規模は1000万円を超え、消費税の課税事業者になってしまいます。

 

消費税の課税事業者になるか、ならないかは、とても大きな違いです。納税の負担だけでなく、所得税の確定申告の他に、別途、消費税の確定申告の手間もかかってしまいます。

 

そういう意味からすると、フリーランスの人で、消費税の課税事業者になりそうな場合は、あえて売上が1000万円を超えないように仕事を絞ってもいいかもしれません。

 

ただし、消費税に関するルールは今後も改正がつづくことが予想されます。課税事業者にならないことが、つねに得というわけではありませんので、今後の改正動向についても注目してください。

 

また、消費税を納める必要が生じた場合は、「未納」に注意しましょう。じつは、消費税はとくに未納が多い税金なのです。

 

未納のリスクについては後でくわしく解説しますが、追徴税が課される可能性もあるので、消費税の課税事業者の場合、売上からあらかじめ消費税分だけを貯めておくなどして、納税資金を確保するようにしてください。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

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小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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