課税事業者になるかならないかは大きな違い
このしくみには、不公平な側面があることは否いなめません。消費税を支払っている人たちは、そのお金が国や地方にまわると考えているのに、お金の流れは違っていますからね。
さらに、事業の種類によっても不公平感はあるでしょう。消費税の課税事業者の判定は売上規模によってなされますが、業種によって利益率が異なるからです。
私のようにひとりでフリーライターをしていれば、あまり必要経費はかかりませんから、売上の多くは手元に残ります。ということは、売上を1000万円以下に抑えながらも十分に生活できるということです。
逆に、利益率の低い商売、たとえば飲食業は、仕入れや店舗家賃などの必要経費がかかりますから、こうした経費に見合う売上を上げなくてはなりません。すると自然と売上規模は1000万円を超え、消費税の課税事業者になってしまいます。
消費税の課税事業者になるか、ならないかは、とても大きな違いです。納税の負担だけでなく、所得税の確定申告の他に、別途、消費税の確定申告の手間もかかってしまいます。
そういう意味からすると、フリーランスの人で、消費税の課税事業者になりそうな場合は、あえて売上が1000万円を超えないように仕事を絞ってもいいかもしれません。
ただし、消費税に関するルールは今後も改正がつづくことが予想されます。課税事業者にならないことが、つねに得というわけではありませんので、今後の改正動向についても注目してください。
また、消費税を納める必要が生じた場合は、「未納」に注意しましょう。じつは、消費税はとくに未納が多い税金なのです。
未納のリスクについては後でくわしく解説しますが、追徴税が課される可能性もあるので、消費税の課税事業者の場合、売上からあらかじめ消費税分だけを貯めておくなどして、納税資金を確保するようにしてください。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】