※本記事は書籍『相続大増税の真実』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

おしどり夫婦。夫急逝でまさかの事態に…

斉藤さん夫婦には子どもがなく、人も羨む仲の良い夫婦でした。ところが、勤務先からの帰り道に斉藤さんが交通事故に遭い、即死してしまったのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

斉藤さんの父親は25年も前に母親と離婚し、その後、独身を通しましたが、5年前に他界しました。母親は再婚後、音信不通で斉藤さん夫婦との付き合いはまったくありません。夫婦は自宅のほかに少々の蓄えがありましたが、評価額にすると自宅の土地・建物5000万円、預貯金1000万円で相続税の心配はそれほどありません。

 

斉藤さんが亡くなり、妻はすべての財産は自分が相続できると思い、夫名義の預金を下ろしに銀行に行きました。すると、戸籍謄本や遺言書、遺産分割協議書が必要と言われたのです。そして書類を整えるうち、音信不通の義母も相続人になると知りました。数ヵ所の市役所へ照会した結果、ようやく母親の居所を突き止め、連絡がつきました。ところが、義母は過去の反省もなく、遺産の分割を要求してきたのです。突然の夫の事故死で、もちろん遺言書もありません。

 

斉藤家の家族構成と相続状況

 

現預金が1000万円しかなく、それをすべて義母に渡すと、いずれ年金がもらえるようになるとはいえ、妻の生活が苦しくなります。そこで現在、第三者を入れて交渉中です。

 

●対策をしなかった場合

母親に3分の1の相続分があるため、2000万円の遺産を支払う必要があります。また、支払わずに遺留分を請求されると、相続分の2分の1の1000万円を支払わなければなりません。

 

●対策を講じた場合

まず一点目は遺言書です。今回は突然の事故で、若くして亡くなったので遺言書を残す意識はまったくなかったと思いますが、すべての財産を妻に相続させる旨の遺言書を夫が書いておけば問題を軽減できました。ただし、義母から遺留分侵害額請求があれば、遺産の6分の1の1000万円は渡す必要があります。

 

子どものいない夫婦の場合、妻を守るためにも、夫は早くから遺言書を作成しておくべきでしょう。二点目は、配偶者への居住用不動産贈与の特例の活用です。結婚生活が20年以上にわたっていれば、妻に居住用財産の2000万円贈与をしておくのです。

 

贈与税の基礎控除額110万円もあわせて贈与しておくと、斉藤さんの遺産は3900万円弱に減少し、母親の遺留分は650万円弱に減少します。

 

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相続大増税の真実

相続大増税の真実

駒起 今世

幻冬舎メディアコンサルティング

2013年度の税制改正による「基礎控除の4割縮小」と「最高税率の引き上げ」で、これまで相続税とは無縁と思っていた一般家庭にも、相続増税の影響が直撃する可能性がでてきました。 「今すぐ節税をはじめなければ、とんでもな…

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