「アラビカ種」が必ずしも高級とは言えない
コーヒー豆の栽培種には大きくわけるとアラビカ種とロブスタ種があります。ロブスタ種は正式にはカネフォラ種と呼ばれますが、本記事では馴染みがあるロブスタ種という名前を使っています。この他、リベリカ種を加えて3原種とする場合もあります。
コーヒー業界では伝統的に、アラビカ種が高級であり、ロブスタ種は高級ではないという見方が定着しています。アラビカ種が高級とされるのは風味が豊かなのに栽培が難しく、ロブスタ種と比べると実をたくさんつけにくいため。加えて標高1000m以上の高地で栽培されるものが多く、コストが余計にかかるからです。それに対してロブスタ種は標高300〜800mでも元気に育ち、作付けも楽なので低コストで大量に栽培できます。
とくに日本には、海外にはない独自の缶コーヒーというコーヒー文化があります。1缶たった100円ほどでコーヒーを飲ませるためには、安価な豆を使う必要があります。そこで白羽の矢が立ったのがロブスタ種。
この他、高温多湿の日本ならではのコーヒー文化だったアイスコーヒー(過去形で記したのは、4年ほど前からコールドブリューという名前で欧米でも注目されるようになったからです)、インスタントコーヒー、ブレンドコーヒーの原料豆としてもロブスタ種が用いられています。アイスコーヒーにロブスタ種が用いられるのは、冷やしてもしっかりした味を感じさせるためです。
天下のセブンイレブンがコンビニコーヒーに参入する際、わざわざ「アラビカ豆を100%使っている」とアピールしたのは、アラビカ種=高級というイメージを利用したといえるでしょう。
ところが、イタリア流のエスプレッソはロブスタ種を15%程度、多い場合には50%もブレンドしています。なぜでしょうか。
はじめに急いで誤解を解いておくと、アラビカ種=高級、ロブスタ種=高級ではないという図式は物事をあまりに単純化しすぎています。
アラビカ種にも質の低い豆があるように、ロブスタ種にも風味豊かな高級品が存在しているのです。イタリア流が用いるロブスタ種はエスプレッソのための特別なロブスタ種であり缶コーヒーなど安価なコーヒー用のものとははっきり一線を画しており、値段もアラビカ種と同じくらいです。
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