「貯蓄なし」世帯を襲うコロナ禍
2020年、突如として世界を混乱に陥れた新型コロナウイルス。それから1年ほど経ち、ワクチン接種など、明るい兆しも見えてきましたが、一方で感染再拡大で緊急事態宣言再発令、続々みつかる変異株と、いまだコロナ禍の出口はみえてきません。
裁判所の「司法統計月報(速報値)」によると、自然人(法人に対する人)の自己破産件数は5538件。また都道府県別(裁判所管内別)でみると、自己破産件数(自然人)が最も多いのが「東京都」で698件。「大阪府」「神奈川県」「北海道」「埼玉県」と続きます。さらに人口比でみていくと、最も多いのが「北海道」で、「宮城県」「大阪府」「和歌山県」「高知県」と続きます(図表1)。一方で最も少ないのが「徳島県」で、「島根県」「石川県」「三重県」「福島県」と続きます(関連記事:『都道府県「自己破産数」ランキング…コロナで最も苦境の県は?』)。
また厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年)によると、高齢者世帯以外の世帯、1世帯当たりの平均貯蓄額は1077万4000円。2000万円以上の貯蓄があるという回答が14.6%と7世帯に1世帯という結果に。
一方で高齢者世帯以外の世帯の13.0%、児童がいる世帯の11.6%、母子世帯の31.8%が「貯蓄がない」と回答しています。8世帯に1世帯は蓄えがないという恐ろしい状況で、母子世帯に至っては3世帯に1世帯という水準です。
さらに年齢階級別にみていくと、29歳以下では平均貯蓄額は179.8万円に対して、平均借入金額は248万円。30代では530万円の貯蓄に対して、1071.1万円の借入、40代では650.9万円の貯蓄に対して1002.7万円の借入、50代で1075.4万円の貯蓄に対して546.8万円の借り入れとなっています。つまり20~40代世帯は債務超過という状況です。
そして全世帯の54.4%、児童のいる世帯に限ると60.4%、母子世帯に限ると86.7%が「生活は苦しい」と回答しています。約半数の世帯が生活苦を感じています。
そのような状況下で突如、世界を襲った新型コロナウイルス。給与減に加えて、職を失い、生活が立ち行かなくなり、自己破産……。そんな悲劇が繰り広げられていても、なんら不思議なことではありません。