都道府県別に「自己破産件数」をみていくと…
元々、多額のローンを抱えている働き盛りの世代。そこにきてのコロナ禍で、大きく給与を下げた人もいます。業種によっては営業もままならず、職を失った人も珍しくないでしょう。
「もう借金を返せない……」。そうなったとき、取れる手段のひとつが「自己破産」です。
裁判所の「司法統計月報(速報値)」をみると、2020年11月の破産事件は5,960件。そのうち自己破産は5,930件、さらに自然人(法人と対比されている概念で人のこと)は5,538件でした。
自己破産とは別に「個人民事再生」というものもあります。そちらは全地裁合計で967件。そのうち小規模個人再生事件は905件で、給与所得者等の再生事件は62件でした。
自己破産と個人民事再生では、「借金の減額・免除」「財産処分の有無」「資格制限」の点で違いがあります。
自己破産は原則、借金の支払い義務が免除されますが、個人民事再生は借金は大幅に減額されるものの、減額後の借金は返済しなければなりません。また自己破産をすると、原則として現在価格が20万円を超える財産が処分されますが、個人民事再生の場合は、最低限、保有財産の価格と同等額は返済しなければならないものの、財産を処分されることはありません(住宅以外の財産でローンの残債がある場合は処分される場合もあります)。さらに自己破産をすると、手続きの期間中、特定の資格を有する職に就くことが制限されますが、個人民事再生の場合には資格制限はありません。
以上のような違いはあるものの、その数から、多くは自己破産を選択するケースが多いようです。さらに自己破産についてみていきましょう。
前述のとおり、2020年11月の破産事件数は5,960件で、1月からの累計は70,711件となっています。前年と比較すると、マイナス1,609件。意外にも3%ほど減少しています。さらに11月だけをみてみると、前年同月比87.5%となっています。
給与減など、マイナスな状況が続いていますが、破産事件数は前年に比べて減っています。コロナ禍、政府による支援もあり、実際に破産にまで追い込まれるパターンが減っているからでしょう。この苦しい状況下よりも、コロナ禍あと、支援が減ったり、なくなったりしときのほうが、破産件数は増えそうです。
2020年11月の破産事件件数をもう少し細かくみていきます。都道府県別(裁判所管内別)でみると、自己破産件数(自然人)が最も多いのが「東京都」で698件。「大阪府」「神奈川県」「北海道」「埼玉県」と続きます。やはり人口の多い地域だと、自己破産件数も多くなっています。
そこで人口比でみていくと、最も多いのが「北海道」。「宮城県」「大阪府」「和歌山県」「高知県」と続きます(図表2)。
さらに前年同月比でみていきましょう。全国的には前年比87.5%となっていますが、15の地域で前年超えとなっています。そのなかでも前年と比べて破産件数(自然人)が多くなったのが「和歌山県」で前年比171%。「栃木県」133%、「岐阜県」113%、「広島県」110%、「群馬県」109%となっています(図表3)。
今回、自己破産件数について、2020年11月の数値に絞ってみていきました。新型コロナウイルス感染の第3波到来と騒がれていた頃に時期を絞っているので、地域の実情に沿っていないかもしれませんが、このコロナ禍、地域によって窮状も異なるということは推測できます。緊急事態宣言の対象地域が増えているいま、さらなる支援が求められています。
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