香港政策の大転換?中国「次期5ヵ年規画」の行方を読む

2020年10月の中国共産党中央委員会第5回全体会議で決定された建議に基づき、この3月に開催される全国人民代表大会では、次期第14次5ヵ年規画(2021〜25年)が採択される予定となっている。国家安全維持法の実施後もなお混乱の余韻が残る香港は、中国経済社会全体の指針となる5ヵ年規画の中、どのように位置付けられるのであろうか。建議の内容から読み解いていく。本稿は筆者が個人的にまとめたものである。

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着々と党の方針を固める中国、混乱の余韻残る香港

中国では全国人民代表大会(全人代)が3月に開催され、昨年10月の党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で決定された建議に基づき、次期第14次5ヵ年規画(2021〜25年)が採択される予定だ。

 

香港では、2019年央から昨年にかけ、逃亡犯条例制定の動きに端を発して社会が混乱し、昨年6月に中国当局は香港国家安全維持法(国安法)を制定・実施した。以後、取締りが強化され、中でも、21年1月6日、民主派前立法会議員ら53名が国安法の国家政権転覆容疑で一斉逮捕されたことが内外に大きな衝撃を与えた。

 

香港地元紙は逮捕者と昨年の民主派による非公式な予備選出馬との関連を指摘し、また逮捕者には前議員の他、民間集会を主導した活動家や元記者などが含まれているとし、①ほどなく大半が保釈されたが、パスポートを没収され、香港に留まることが条件とされたことの適法性、②逮捕者の中に予備選に関係しない社会活動家も含まれていることなどの疑問点を提示。

 

また中国寄りと見られている一部海外華字誌も、①香港の法律専門家の間で、予備選には国安法の重要要素である武力の行使やその他違法手段といったものは見当たらないとする見解と、たとえデモであっても、それが社会を麻痺させ国安に脅威を与える場合は国安法で言う違法手段にあたるとの見解で分かれている、②香港特別行政府は何が国安法に抵触するか、境界を明確にしなければ、特別行政府と香港居民の間の緊張が高まり、再び反政府の波が高まる恐れがあると警鐘を鳴らしている。

 

他方、中国外交部や林鄭香港特別行政区行政長官は、ちょうど米国でトランプ支持者が米連邦議会議事堂に乱入した事件を引き合いに、米国などの批判は「双重標準」、ダブルスタンダードだと反論している。

 

こうした中、向こう5年間の中国経済社会全体の指針となる第14次5ヵ年規画の中で、香港がどう位置付けられるか、規画の焦点の1つとして注目される。

反中色強い海外華字誌から「香港の完全辺縁化」の声も

5中全会終了直後に発表された会議の骨子を伝える公報(コミュニケ)は、香港について最後の方で、「香港とマカオの長期的繁栄と安定を保持していく必要がある」と、これまでの同種の文書に比べ、やや素っ気ない印象の言及に止まった。このため、反中色の強い海外華字誌を中心に、一斉に、香港の「完全辺縁化(マージナライズ)」だとの声が高まり、特に「一国両制(二制度)」「高度自治」「民主」についての言及がなかったことが注目された。

 

例えば、現行第13次5ヵ年規画(2016〜20年)を議論した2015年の5中全会では、「香港と本土の協力発展を深化させる。国家経済の発展と対外開放における香港の地位と機能を向上させる。香港の経済発展を支持し、その民政改善、民主推進、社会の和諧(融和)を促進する。香港が2030年に向けての本土の持続的発展に積極的に参画すること」などと言及していた。また、2019年10月の4中全会では、「一国両制を堅持する」ことが明記されていた。

 

ただ、香港が「完全辺縁化」されたのかは、以下の理由から、評価は慎重に行う必要がある。

 

①公報は5中全会終了直後に公表されるだけに最も内外の注目度が高く、そこでは、なお政治的に微妙な問題を抱える香港について、内外で様々な憶測が出ることを回避するため、中国当局はできる限り簡潔な言及にしておきたいと判断したと考えられることだ。実際、会議終了数日後に公表された規画建議全文は、海外ではあまり注目されず、また報道されなかったが、香港について、公報より詳細に言及している(後述)。

 

②公報はマカオや台湾についても香港同様の短い言及に止めており、香港への言及が特に例外的だったわけではない。マカオは香港とセットで言及されただけであり、また台湾は、2015年の5中全会公報では「台湾との協力発展を深化。互恵と双(シュワン)赢(イン)(ウィンウィン)方式で両岸(本土と台湾)の経済協力を深化し、台湾のより多くの一般民衆と青少年、中小企業が利益を受けるようにすること」などとされていたが、今回は「両岸関係の平和的発展と祖国統一推進」とされただけだった。

 

③そもそも今回5中全会の主題は、中国全体の次期5ヵ年規画と2035年遠景(長期)目標の建議だったこと。習近平国家主席は5中全会で、建議案の中で補足説明が必要な重点問題として、「質の高い発展推進」「国内大循環を主体とした国内、国外の双循環」「規画と2035年遠景目標」「人民全体が共同に豊かになること」「発展と国家安全保障を統一的に考える(統筹)」「発展全体を系統的に見る」「共産党成立100周年を迎え、全面小康社会を完了する重要時期」の7項目を挙げたが、その中に香港はなかった。中国当局としては、すでに2019年4中全会での方針に沿って、香港社会の混乱を抑えるため国安法を制定し、香港を中国全体の大局的発展と一体化(融入)させるという長期的かつ包括的香港政策を示していることから、今回5中全会で香港について多くを語る必要はないと判断したと考えられる。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載中国、次期5ヵ年規画で「香港」をどう位置付けるのか

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