次男と長女が驚愕。親と同居の長男から一枚の手紙が…
よくあるのが、親と同居していた子どもとそうでない子どもでもめることです。同居している子どもから見れば「親の面倒を見たのだから多くもらうのは当然だし、家も土地も家督も相続する」と思うこともあると思います。介護などをしたのであれば苦労もひとしおですのでなおさらそう思うかもしれません。
しかし、それにもかかわらず別居している兄弟と全く同じ取り分になったとしたらどうでしょうか。きっといい気持ちはしないはずです。それも、両親からの遺言などがなくて法定相続通りになったのであれば、兄弟にわかってほしいとアピールしたい気持ちも出てくるでしょう。しかしだからといって、同居している子なら何でもしていいというわけでもありません。
私が担当した相続にこんなケースがありました。父親が亡くなり相続となったのですが、子どもの中で唯一同居していた長男が、別々で暮らしていた次男や長女宛てに相続の書類を送ったのです。そこには「印鑑を押して送り返してくるように」と書かれていました。そして中身は、土地、建物などの財産をすべて長男が相続するという内容の遺産分割協議書だったのです。
長男は同居していたこともありますし、「法事もあるし、家も守るから後はこちらに任せろ」という意味合いを込めて送ったつもりのようです。しかし、何の相談もなしに印鑑を押して送り返してほしいというのでは、他の兄弟姉妹も穏やかな心情でいられないと思います。
別居している子どもにも言い分があります。「親と同居すれば家賃もかからないし生活費も親が出しているはず」と考える方もいるのです。そうなると「財産は法定相続通りに分けてもらおう」というように主張することになります。書類を受け取った兄弟姉妹の配偶者も「簡単に印鑑を押さないほうがいいんじゃないか」ということにもなるでしょう。「うちも裕福ではないのだから」くらいのせりふは容易に想像できます。
この事例では、実際に長男が負担しているものは他の兄弟姉妹よりも大きかったのです。だから、別居している子どもを蚊帳の外に置いて不信感を募らせるよりも、客観的な事実を説明して、冷静に納得してもらうことが必要でした。
相続人となる子どもたちにも、それぞれ考えがあります。それを納得できる方向に持っていかなければ、平等の思想が出てきて、たちまち争いが起こってしまいます。こういった争いを予防できるのは、やはり親です。親の意志が明確に子どもたちに伝わっていれば、争いは少なくなるのです。
相続で一度こじれてしまうと、仲直りせぬまま一生涯、絶縁状態になってしまうことが多いのです。自分の子どもたちがそのように争わないためにも、また親から見た平等を実現するためにも、できることを今から考えておくべきだと思います。