前回は、後継者難にあえぐ中小企業の実態について説明しました。今回は、年々増加傾向にある中小企業の「M&A」の実態について見ていきます。

M&Aの多くは中小企業が関連!?

中小企業が悩む後継者不在の問題を解決する手法として、M&Aに注目が集まっています。M&Aと聞くと、例えばイオンがダイエーの株を買い増しして子会社化するといった大企業同士のM&Aをイメージしがちですが、件数で見た場合、実はM&Aの多数を占めるのは中小企業が絡むものです。日本国内におけるM&Aの件数は、増加傾向にあります。

 

以下の図表、M&A助言会社のレコフの調査にあるように、1998年までは500件以下だったM&Aが2000年以降は1000件を超えて推移しています。中小企業において、売り手の最大の動機は、事業承継です。子どもがいなかったり、また、いたとしても“家業”を継ぐ意思や資質がなかったり・・・。オーナー社長としては、苦労して続けてきた会社を畳んでしまうのは忍びなく、取引先や付き合いのある同業者に事情を話して引き受けてもらうといったケースが少なくありません。

 

 

【図表 M&A件数の推移(日本企業同士のM&A)】

買収対象になる=「企業価値が評価された」という証

後継者不在という現実的な問題に加えて、M&A自体が事業承継や会社経営の手法として一般化し、広く認知されるようになったことも中小企業でのM&Aの増加を後押ししています。中小企業同士はもちろん、大企業が中小企業を買収するというケースも増えています。

 

ちなみに、大企業が中小企業を買収する理由は、単なるスケールメリットの追求だけではなく、高い技術力などを評価し、シナジー効果を重視した「量より質」のM&Aを志向するようになっているからです。このような風潮を受けて、M&Aを専門に扱うコンサルティング会社も増えてきました。

 

同時に、売却する側の意識としても、資本政策の一環として自社株式の売却を検討することに、かつてほどの抵抗を感じなくなってきています。事実、M&Aの本家ともいえる米国では、「M&Aによって会社を売却する」ことを賛美する風潮があります。他からM&Aをしたいと手が挙がるということは、それだけ価値のある会社をつくり上げたからだと見なされているのです。

 

 

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『オーナー社長のための会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オーナー社長のための会社の売り方

オーナー社長のための会社の売り方

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

オーナー社長にとって、会社人生の最後で最大の仕事こそが事業承継。 創業以来、長年に渡って経営してきた会社を次代に残す。また、従業員の雇用を守りつつ、買い手企業の新たな資本の元で、会社の価値をさらに高めていくこと…

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