すべての元凶は、なにも話し合わないまま逝った父
脅迫めいたメールを送る周子さんにももちろん問題はあるが、はっきりいって、悪いのは亡くなった良夫さんである。
子どものいる熟年者の再婚は、若くして結婚するのとは違い、介護・相続・お墓といった問題が身近に迫り、避けては通れない。若い人のように「好き! 一緒にいたいだけなの!!」という気持ちで突っ走ってしまえば、家族に迷惑をかけるのである。
熟年再婚をするのであれば、とくに「相続・お墓」については、家族でしっかり話し合いをし、それを遺言書など、法的に有効な形で残しておく必要がある。
「いった、いわない」は、もめごとのもとなのである。
また、実の親子であればもめない遺産分割も、なさぬ仲の親子では話し合いがむずかしくなるのは、想像にかたくない。
良夫さんは確かに遺言書を書いたが、その内容は「自宅を息子に」という記述のみあった。それ以外の財産の分け方も決めておくべきだったのだ。そうすれば、息子と後妻が自分の財産をめぐっていざこざを起こすこともなかった。
また、お墓についても元気なうちに、家族で話し合うべきだった。板橋さんの気持ちを考えれば、亡き母の眠っている墓に後妻さんも入るというのは、抵抗があって当たり前である。
父が亡くなったあと、そんな話をされるだけでもいやなのに、ましてやそれを断るのだって、いい気持のするものではない。
熟年再婚をするなというわけでは決してない。
幸せな気分のときに、「相続だ、お墓だ」といった話をするのもいやだ、という気持ちもわからなくもない。でも、避けては通れない問題であることは確かなのである。
面倒だからといって問題の先送りをすることなく、熟年再婚は、婚姻届けと遺言書とお墓の話合いのセットで、ぜひお願いしたいものである。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
板倉 京
WTパートナーズ株式会社 代表取締役
WT税理士法人 代表社員
税理士
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