不毛な議論を招いた、林鄭長官の「三権分立」否定発言
8月末、香港教育局が学校教材の事前検閲で「三権分立」の文言を削除。直後、林鄭長官が「香港では司法、行政、立法が各々の職務を司り、相互のチェック・バランスがあるが、三権分立はない」と発言。
歴史を振り返ると、そもそも英領時代は総督に全ての権限が集中し「三権分立」はなかった。1980年代に香港基本法を準備する過程で、起草委員から「西側の三権分立モデルを採用すべき」との意見があったが、鄧小平が反対。基本法に「三権分立」の文言は記載されなかったが、三権(第2節行政、第3節立法、第4節司法)と三権間のチェック・バランスや司法の独立性は規定され(64条、73条、85条など)、これらを基に、法曹関係者を中心に「香港は三権分立」との見解が主流となった。
今回、林鄭長官が三権の機能を区別し、相互のチェック・バランスを認める一方で、三権分立はないとしているのは「文字遊戯(言葉の遊び)」、つまり、機能区分と相互のチェック・バランスこそが三権分立に他ならないとの指摘がある。
他方、本土幹部や一部香港法曹関係者は従来から「香港には司法の独立はあるが、三権分立は別の概念」「三権分立かどうかは主権国家の話で、香港は主権国家ではない」「香港はSARの長を中心とした行政主導の体制」としてきたが、今回も、香港連絡弁公室(中联弁、香港所在)と国務院港澳弁公室(港澳弁、北京所在)が長官発言を支持。
このように以前から議論は錯綜・混乱している。問題の本質は三権間でチェック・バランスが健全に機能しているかで、それを見極めていくことが現実的に最も重要だ。日本国憲法にも「三権分立」の文言そのものはなく、三権とその相互の関係が規定されているだけで、その限りにおいて、香港基本法と日本国憲法に大差はない。ただ、今回の林鄭発言でさらに不毛な議論が続くことになり、国安法で生じた諸外国の香港に対する懸念を不必要に増幅させる結果となった。
本土との関係強化を好感し、本土からの投資は増加傾向
『「国安法」で国際金融センター・香港はどうなる?』でも触れたが、香港経済も現在新型コロナの影響を受けており、国安法の影響を取り出すことは難しい。ただ金融については、香港の金融当局、香港の金融当局である香港金融管理局(HKMA)が7月下旬に香港所在金融機関に宛てた書簡によれば、4月〜7月中旬の香港へのネット資金流入は140億米ドル、6月〜7月中旬も110億米ドル以上の資金が流入。
こうした資金流入に支えられ、香港ドルの対米ドル相場はペッグ範囲(1米ドル=7.75〜7.85香港ドル)の最も香港ドルが強い付近で推移。香港と上海や深圳の証券取引所をつなぐストックコネクトでは、外国人投資家が香港経由で本土株に投資する「北向通」は上期過去最高の108.3億ドル(前年比69%増)、本土投資家の香港取引所への投資「南向通」は1日平均207億香港ドル(86%増)で双方向とも大幅増加だ(8月29日付「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」)。
もう一つの主要産業である不動産の市況は2018年低迷、19年上期好転したが、下期、香港の混乱とそれに伴う景気後退などを受けて再び低迷、20年に入り、新型コロナの影響も加わり低迷が続いていたが、不動産情報サイトの房地産資訊平台が7月下旬に行ったヒアリング調査では、(新型コロナ感染がやや収束する兆しが見えたタイミングでの調査だったこともあるが)、39%が20年下期の不動産価格上昇を見込み(予想平均上昇率9.4%増)、22%が下落を予想(予想平均下落率▼11.2%)。
約半数が下落予想だった過去2回の調査時から市場期待が大幅に好転。これまでのところ、市場は、国安法で昨年来の混乱が収まり、本土との関係がより強くなることを好感しており、本土からの投資が増えている。
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