●2020年の金融市場はコロナに揺れたが、緩和的な金融・財政政策で、年末には強いリスクオンに。
●2021年は強気過ぎず弱気過ぎない適温相場かつ余剰資金が溢れる流動性相場となる見通し。
●さらに、金融相場から業績相場へ移行ならば持続的な株高も、リスクは景気と業績の回復度合い。
2020年の金融市場はコロナに揺れたが、緩和的な金融・財政政策で、年末には強いリスクオンに
金融市場にとって、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に大きく揺れた年となりました。春先にかけて、コロナの感染が世界的に急拡大すると、金融市場に動揺が広がり、多くの国々が感染拡大抑制のため、全面的あるいは部分的にロックダウン(都市封鎖)を実施しました。その結果、経済活動が急速に冷え込み、各国で大規模な財政支出と積極的な金融緩和が実施されました。
これらの政策が、総じて迅速に行われたため、主要株価指数は3月に底を打ち、夏場にかけて緩やかな回復基調をたどるなど、金融市場は次第に落ち着きを取り戻しました。その後、11月3日の米大統領選を終えたことで、政局不透明感が払拭され、また、ワクチンの開発進展が報じられると、経済活動正常化への期待が広がり、金融市場では広くリスクオン(選好)の動きが強まりました。
2021年は強気過ぎず弱気過ぎない適温相場かつ余剰資金が溢れる流動性相場となる見通し
2021年は、多くの国々で景気に配慮した政策がしばらく継続され、また、時間の経過とともにワクチンが普及することで、経済活動がゆっくりと正常化に向かうことが想定されます。「緩和的な金融環境」のなか、「緩やかな景気回復」が実現した場合、両者の併存によって、相場は強気過ぎず、弱気過ぎず、ちょうどよい加減にある「適温相場」の状態となります(図表1)。
一方、日米欧の中央銀行の総資産残高に目を向けると、2008年9月のリーマン・ショック以降、増加傾向にありますが、これは国債の買い入れなど、非伝統的な金融政策を通じて市場に巨額の流動性を供給し続けてきた結果です。余剰資金が市場に溢れると、株式などに流入して株高を促しやすくなる「流動性相場」が形成されます(図表2)。足元ではその度合いが強まっており、2021年も流動性相場の継続が見込まれます。
さらに、金融相場から業績相場へ移行ならば持続的な株高も、リスクは景気と業績の回復度合い
なお、景気や企業業績が悪い状況でも、金融緩和によって国債利回りなどが低下し、株式の相対的な魅力が高まって、株価が上昇する相場を「金融相場」といいます。今年の株高は、コロナ・ショックで形成された金融相場によるところも大きいと思われます。なお、2021年に主要国で景気や企業業績が本格的に回復した場合、金融相場は業績相場へ移行するため、株価の持続的な上昇が期待されます。
以上より、2021年の市場環境を考えた場合、流動性相場が続くなか、適温相場の形成が見込まれ、金融相場から業績相場への移行により、世界的な株高基調の継続が予想されます。リスクは景気と業績の回復度合いです。弱過ぎた場合は株安要因ですが、流動性相場と金融相場が支えとなります。より警戒すべきは強過ぎた場合で、金融緩和終了の思惑から流動性相場、適温相場、業績相場も終わるとの懸念が強まり、株価急落の恐れもあります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年は適温相場と流動性相場のなか金融相場から業績相場へ』を参照)。
(2020年12月8日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト