「それでさぁ、何をやったかだけど、素直に一番悪い状況を想定し、今後の見通しについて下方修正したよ。役員たちも集めて、とにかく丁寧に固いシナリオを作成した。本音はもう少しやれると自信はあったから数字を見てさすがに落ち込んだけど、さすがに1部上場会社としては株主の皆さんに悪いニュースは早く伝えないとね。
株価が大きく下がることは覚悟したけど、まずそこができなきゃね。相当しんどいけど。この状態をパートナーとして選んだ役員たちと楽しめるようになるまで、特に今まで気付いていなかったことが、この状況で分かり始めたのでやりますよ。初心に帰り。復活するよ」
これからまだまだ予断は許せない状況ではありますが、下方修正のあとも株価は大きく下がらず、スピードをもった開示により市場から一定の信頼を得た模様です。
ずっと好業績で推移してきた企業も、このように突然訪れる経営環境の変化により、大変な思いをされます。すぐに対処するのは当たり前のことのようですが、自社に起きるとなかなか対応が遅れがちになるものです。
しかしながら、そんな時こそ早めに手を打ち、なによりもステークホルダーにスピードをもって説明することが上場会社としての責務です。
今回の会談で改めて大きな気付きを得ました。IPO準備期間は、審査をクリアするための期間というよりも、上場後の経営者としての考え方や覚悟を学ぶためにある大きな機会だということです。また、この事例の中で学んだこととしては、社長一人で経営しているわけではないということを社長自ら理解されていることです。
社長や事業を支えている役職員や管理部門のスタッフの存在がいかに重要で、各人がその役割を的確にこなすことで荒波を乗り越えられるということです。言葉でいうのは簡単ですがなかなか難しいのも現実で、上場を目指す社長にとって重要なことは、上場準備の過程の中で管理部門の役割の重要性を理解し、期待すること、その期待に管理部門が確実に応えることです。改めて「IPOは人の力」だと強く感じます。
繰り返しになりますが、IPOを目指す経営者の第1条件は「①上場後の成長を担保すること」にあります。その条件をクリアできれば、次に「②パートナーとなるCFOや管理部門スタッフを迎えること」です。内部統制や上場後の開示体制を社長が理解したうえで構築しなければなりません。最後にパートナー(CFO)を通じて「③証券会社や監査法人の指導に真摯に耳を傾け、IPOに向けた課題を一つ一つ解決すること」が最短のIPO成功への道となるのではないでしょうか。
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