紙と印鑑はもういらない…「デジタル契約書」の大きなメリット

コロナ禍の厳しいビジネス環境において、企業には「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の導入が一層急がれる。情報化やデジタル化を推進するDXだが、これまでアナログで業務を続けてきた中小・零細企業こそ、導入による勝機を見込みやすい。それはなぜか。成功事例をもとに解説していく。※本記事は『中小企業のDXは会計事務所に頼め!』(金融ブックス)より一部を抜粋・編集したものである。

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デジタル契約書で、急ぎ案件も即日スタートが可能に

【専門サービス業(従業員8名)の事例】

 

この会社は、インターネットを活用する特定業種へのコンサルティングを展開し、顧客の信頼を得ています。

 

コンサルティングを開始するには「契約書」を取り交わさなければなりません。そしてこれが厄介な課題でした。契約の内容を双方が確認し、契約書を必要部数作成・製本し、収入印紙をそれぞれ貼付して、すべての契約書に両社が押印するというステップを経なければならず、契約締結までに2週間程度かかってしまいます。

 

一方この会社に相談に来られるお客様の課題は、インターネット関連ということもありスピード感が重要。「すぐにでも支援してほしい」と望まれることも少なくありません。必要なステップであるとはいえ、契約書の取り交わしにかかる時間は、お客様のビジネスにおいて機会を逃してしまいかねない問題でした。

 

「ご相談の翌日から支援をスタートできるような契約の方法はないのか」と考えていたこの会社が見つけたのは、クラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」です。弁護士が監修しているため安心感があり、月間5件までなら無料で利用できます。

 

契約内容に双方が合意した後のいくつものステップは、すべてパソコン上の作業だけで完了します。コンサルティング会社が、押印か所等を指定した契約書の電子ファイルをアップロードすると、お客様にその旨がメールで通知され、お客様は電子的に押印するだけ。お客様側には、何のソフトウェアも必要ありません。法律で紙の契約書が義務付けられているものを除き、法的にも認められており、安全性も担保されています。

 

ただ、お客様によっては「紙の契約書でなければならない」というルールの会社もあり、すべての契約をクラウドサインに移行することはできません。「100%でなくてもメリットは大きい」と判断したこの会社は、クラウドサインの導入に踏み切り、営業社員は事前に「契約書はオンライン締結が可能か」をお客様に確認することで対応しています。

 

デジタル契約書にしたことで、課題であった契約書のやり取りにかかる時間は劇的に短縮されました。通常2週間程度かかっていたものが、数時間、場合によっては数10分で完了するのです。最短のケースでは契約を決めたその日のうちに、コンサルティングをスタートすることができるようになりました。早期に契約できるということは、その分、売上も向上することになります。

 

さらに、コストも削減されています。印刷代、収入印紙代、郵送費が不要になったことに加え、契約作業の時間短縮により、社員の業務効率も高まっています。

 

社内にいなくても対応できることも、大きなメリットです。これまでは外出時は対応できないことも時間がかかる要因の一つでしたが、この課題も解消されました。想定外であった在宅勤務の状況下にあっても、契約作業を進めることができています。

 

【ポイント】

必須と思っていた「紙と印鑑」ですが、デジタル化するといろいろなメリットがあります。「100%移行できないならば、やらないほうがいい」という考え方もあるかもしませんが、むしろ完璧を追求しすぎず、できる範囲でデジタル化したことが、短期間での成功につながっています。雇用契約など、始めやすいところからスタートしてみるといいですね。

判断が不要な定形業務を「機械まかせ」にして効率化

【卸売業(8名)の事例】

 

この会社は、機械工具を中心とした卸売業を営んでいます。社長は、お客様の「これが必要! こういうものがほしい!」というニーズにもっと応えられるよう、取扱商品の種類を増やしたいと考えていました。

 

しかし、お客様からの受注、メーカー等への発注に関わる業務には、課題がありました。お客様からの注文は、電話やFAX、営業担当者からの書類で届くので、受発注の担当者は、紙の注文書を見ながらエクセルに入力しています。メーカーへの発注は、独自のオンライン発注システム、発注書の郵送など、発注先によって手続きが異なるため、それぞれの方法で行わなければなりません。受発注に関する文書や資料は、お客様別、発注先別にデータの整理も必要です。

 

しかもこの作業は、毎日同じことの繰り返し。同じデータを、異なる文書やシステムに何度も入力しているので、間違いも発生。現在の体制では限界でした。

 

この会社の課題を解決するために、会計事務所が提案したのは「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」ツールである「EzRobot(イージーロボット)」です。RPAとは、パソコンで人が行っているキーボードやマウスの操作を、専用のソフトウェアで記録し、自動的に実行させる仕組み。画面上をカーソルが勝手に動き、あたかも人が作業しているかのように操作を行わせることができます。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

たとえば、エクセルから別のシステムに「コピー&ペースト」で転記する、ファイルをルールに沿ったファイル名で保存するなどの作業を自動化できます。判断を伴わない定形、繰り返しの作業は人よりはるかに早く、この事例のようなケースには適している方法の一つです。

 

この会社では、FAXや電話での受注からエクセルの入力作業までは人が行い、それ以降を自動実行させることにしました。

 

まず業務の流れを確認したところ、毎回少しずつ違う部分があることが分かりました。そのままでは自動化ができないため、いつも作業が同じ流れになるよう、業務フローを徹底的整理。繰り返し作業をできるだけまとめてできるように、工程も組み替えました。文書や資料のデータ整理も、ファイル名などのルールに従って、自動的に目的のファイルを移動させるようにしました。

 

自動実行中にエラーが発生することもあり得ます。たとえば「ファイルを開こうとしたら使用中で開けない」、「『登録』ボタンをクリックしようとしたら想定した場所にボタンがない」などのケースです。そうなると実行が停止してしまうか、意図しない動きを続けてしまうため、エラーの記録を残しつつ、次の処理に進めるようにしました。こうしておけば、後でエラーになった作業を確認、修正できます。

 

また判断が必要な作業については無理に自動化せずに、人が行うこととしました。

 

判断が不要な定形業務は機械にまかせられるようになり、その間、受発注担当者は別の業務を進められるようになりました。また人の作業による複数回の入力がなくなったため、入力ミスがなくなり、データチェックの時間も大幅に短縮できました。

 

これなら取扱商品を増やしても、受発注担当者の作業が膨れ上がることはありません。

 

【ポイント】

パソコンでの繰り返し作業は、RPAによって効率化することができますが、業務フローが定型化され、ルールが明確になっている必要があります。この会社では会計事務所のコンサルタントが、客観的に業務フローを見直したことが成功につながりました。一方で、全部を自動化しなかったこともポイントです。完璧を目指すだけでなく、自動化と人の作業分担を見極めることも大切なのです。

 

 

山口 高志

中小企業DX推進研究会 代表

 

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中小企業DX推進研究会 代表 セブンセンス株式会社 取締役 DX支援部 部長

2005年アイクスグループ(現セブンセンスグループ)入社。シンクライアントシステム、ペーパーレスシステムなどの導入と構築・運用に携わるとともに、業務フローにITを組み込むことを強み会計事務所のシステム導入サポート、コンサルティングも行う。

著者紹介

連載中小・零細企業の働き方改革!即実践できるデジタルトランスフォーメーション導入事例

中小企業のDXは会計事務所に頼め!

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