日本の中小・零細企業…「目から鱗のデジタル化」成功事例

コロナ禍の厳しいビジネス環境において、企業には「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の導入が一層急がれる。情報化やデジタル化を推進するDXだが、これまでアナログで業務を続けてきた中小・零細企業こそ、導入による勝機を見込みやすい。それはなぜか。成功事例をもとに解説していく。※本記事は『中小企業のDXは会計事務所に頼め!』(金融ブックス)より一部を抜粋・編集したものである。

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IP電話の導入で「コスト以外」の課題が解決

【製造業(80名)の事例】

 

この会社では支店が増えるにつれ、課題として「電話」が浮上していました。一つはコスト。従来型のビジネスホンは、主装置や電話機の交換、増設等にかかる費用が高く、拠点間の通話料もバカになりません。

 

また電話機の表示名やコールグループなど、設定の変更が必要になると、専門の電話業者に依頼しなければならないことも負担でした。もう一つの課題は、電話の取り次ぎ。代表電話はいったん総務部門が受け、対応部署に転送していましたが、社員が増えてくると取り次ぎも大変だったのです。

 

電話を「デジタルにする」とはこのような課題を解決するために、全社の電話の仕組みを、従来型のビジネスホンから「IP電話」に切り替えました。IP(Internet Protocol)電話は、アナログの音声をそのまま送るのではなく、音声をデジタルに変換してからインターネットを利用して送り、相手側でアナログ音声に戻して聞くという仕組みです。

 

まず電話システムのソフトウェアを動かすためのサーバーが必要です。社員数80名程度の同社の場合は、数万円程度で販売されている中古品のサーバーで十分でした。電話機はIP電話に対応したものでなければなりません。しかし高機能である必要はないので、インターネットの通販サイト等でも販売されている汎用的な電話機を買いそろえました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

IP電話への移行にあたっては、社内のシステム担当者が中心となって取り組み、事前に十分な検証を行いました。電話機の操作はそれまでのものとは異なるため、全社員に操作を説明しましたが、慣れるまでには少し時間がかかりました。課題解決+顧客サービス向上IP電話に切り替えたことにより、課題であったコストを大幅に削減できました。

 

まず初期投資は、安価なサーバーや電話機で対応できましたし、各個人のデスクから本支店を跨いだ内線が可能になり、拠点間の通話料はゼロになりました。また社員や拠点が増加しても、設定を行った電話機を設置するだけ、組織変更があっても、システム担当者が設定を変更するだけなので、専門業者への依頼も不要です。

 

加えて、インターネット環境さえ整っていれば、社員はスマートフォン等で自宅や外出先からでもオフィスと同様に応対することができ、フレキシブルな電話システムになりました。自動音声応答も可能になりました。何らかのサービスセンター等に電話をすると「○○の方は『1』を、△△の方は『2』を…」と音声で案内されることがありますが、あのように代表電話から担当部署や担当者に音声で誘導できることで、取り次ぎの手間がなくなり、お客様に何度も同じ話をしていただくこともなくなりました。

 

IP電話は、課題であったコストや手間を解決しただけでなく、顧客管理という面でもメリットがありました。なぜなら、顧客管理の仕組み(CRM:Customer Relationship Management)とも連携することができるからです。電話をくださった顧客の情報をパソコンの画面に表示しながら通話することができ、顧客サービスも向上させることができました。

 

【ポイント】

IP電話は複数拠点を展開している会社、顧客からの問い合わせ対応が多い会社にはおすすめです。あまりに当たり前な道具である電話ですが、こんなところにもデジタル化による改善の可能性はあります。身近な「道具」ももう一度見直してみると良さそうですね。

Excelデータを会計ソフトに取り込める様式に変更し…

【宿泊業(30名)の事例】

 

この会社は、30棟ほどのホテルを経営しています。経費は、マイクロソフトのExcel(エクセル)で作成した現金出納帳シートに、店舗がそれぞれ入力して本部に提出。本部の経理部門では、それらを会計ソフトウェアにすべて手入力していました。全店舗がほぼ同時期に提出するので、作業量は膨大で、データ入力は経理業務を圧迫する要因となっていました。

 

一方、グループ全体の経営状況を知り、施策を検討するには、試算表は欠かせません。できるだけタイムラグなしに作成したいところですが、データ入力作業が追いつかず、試算表の作成は遅れがちでした。原因は30種類の現金出納帳。社長は、この課題を解決するために、経理の人員を増強しようと考えていました。

 

しかし会計事務所が運用を調べてみると、エクセルの現金出納帳に問題があることが分かってきました。この会社が使用している会計ソフトには、エクセル等のデータを取り込める機能があります。それにもかかわらず、エクセルのシートを見ながら手入力していた理由は、エクセルの現金出納帳が会計ソフトに取り込める様式ではなかったからです。

 

当初全店舗に配布した現金出納帳のひな形自体も適していなかったうえに、それぞれの店舗なりにアレンジも加えられていて、ほぼ30種類の現金出納帳という状態。それらを一つひとつ所定の様式に修正してから、会計ソフトの取り組み機能を使うより、手入力したほうが早い…という判断だったのです。

 

そこで会計事務所のスタッフは、これまでのひな形を踏襲しつつ、各店舗にアレンジの理由や要不要を確認し、改めて全店舗統一の現金出納帳のひな形を作成。ひな形はパスワードで保護し、独自のアレンジを防止しました。さらに、自動的に会計ソフトに取り込める様式に変換するプログラム(エクセルのマクロ)を作成し、取り込み機能を活用できるようにしました。

 

これまで、エクセルの現金出納帳から会計ソフトへの手入力には、1店舗あたり1時間以上かかっていたといいますから、入力作業だけで30時間以上を費やしていたことになります。それが、様式を統一して自動的に変換し、会計ソフトに直接取り込めるようにしたことにより、1店舗あたり数分でできるようになりました。

 

遅れがちだった試算表もすぐに作成でき、経理担当者の残業も減りました。新たな現金出納帳は、以前のひな形をベースに作ったものなので、店舗側も新たなツールを導入したり、これまでの作業を大きく変えたりする必要はありませんでした。手持ちのツールの活用方法を見直すだけで、大きな効率化が可能になり、当初社長が考えていた経理の増員によるコスト増も防ぐことができたのです。

 

【ポイント】

「業務が多い→増員する」ことが必要な場合もありますが、既存のツールの使い方や業務フローなど、足元を見直すことが解決につながることもあります。最低限の投資で、まずは小さく始めて少しずつ改善していくことができるので、特に中小の事業者にはお勧めの視点です。

スケジュール調整に「グーグルカレンダー」を導入

イベントの企画、運営には、多くの人が関わります。大枠の企画に始まり、詳細な内容、デザインから、配布物の作成、イベント当日の運営、スタッフの配置まで、多岐にわたる打ち合わせも必要です。イベント会社では、いつも複数のイベントの準備が並行して動いていますし、外部の協力会社も関わるので、関係者のスケジュール調整はなかなか大変です。

 

この会社の課題も、スケジュール調整でした。たとえばお客様との打ち合わせを設定するにも、関係する社員や協力会社に口頭やメールで問い合わせて、打ち合わせが可能な日程を確認。お客様の都合とも照らし合わせて、調整する必要がありました。空き日程を聞きたくてもつかまらない、メールへの返信がすぐに来ないといったこともあります。そのため調整に時間がかかり、急ぎの打ち合わせが必要でも、直近の予定を入れることができませんでした。

 

関係者のスケジュールが分かっていれば調整しやすいのですが、日々変化しているため、毎回問い合わせをしなければならない状態でした。カレンダーを共有すれば空き時間が見える「みんなの予定をいつでも確認できる方法があれば……」と考えていたところ、「『Google(グーグル)カレンダー』を使えばスケジュールを共有できる」という話を耳にしました。

 

グーグルカレンダーは、グーグルが組織・企業向けに提供しているアプリケーションパック「G Suite(ジースイート)」のなかの1つです。ジースイートには、グーグルカレンダーの他、「Gmail(ジーメール)」、ファイルの共有に便利な「グーグルドライブ」など、いくつものアプリケーションが含まれています。クラウドサービスとして提供されているため、専門的な知識も、システム自体を運用する人員も必要もありません。

 

個人向けには、ジーメールもグーグルカレンダーも無料で提供されているので、使っている方も多いでしょう。ジースイートは企業が使うことを想定しているので、管理者機能があり、アクセス権限などセキュリティを考慮して管理できる点が大きく違います。また個人の場合は「@gmail.com」というメールアドレスになりますが、ジースイートでは会社独自のドメインを使用できます。

 

グーグルカレンダーは、各人の予定が記載されたカレンダーを、お互いに共有できるので、本人に問い合わせることなく空き時間が分かります。たとえば関係者のスケジュールを見ながらミーティングを設定すると、関係者全員にミーティングへの招待を知らせるメールが送られ、承諾されれば自動的に全員のカレンダーにミーティングの予定が入るという仕組みです。

 

この会社の場合は、すでにジースイートを導入してジーメールを使用していたので、追加の費用なしにグーグルカレンダーも使用することができました。また協力会社でもジースイートを利用していることが多いため、カレンダーを共有することで、社内外を含めた調整、ミーティングの招待もできるようになりました。スピーディーな対応で評価もアップグーグルカレンダーの活用を始めてから、課題だったスケジュール調整は非常に楽になり、短時間で予定を決めることができるようになりました。

 

スマートフォン等で操作することもできるので、出先でも調整でき、急な変更への対応も容易。そのおかげで、よりスピーディーな対応が可能になり、お客様にも喜ばれています。

 

【ポイント】

ジースイートは、最も基本的なサービスなら1人月額1000円未満で使用できるグループウェアサービスです。インターネット環境とパソコンがあれば導入でき、カレンダー、メール、ドライブなどのアプリケーションは相互に連携しているので、シンプルな共有の仕組みを作ることができます。この会社のようにスケジュール調整で苦労している企業のほか、拠点が分散している企業や創業したての会社、在宅勤務を想定した働き方などにもお勧めです。

 

 

 

山口 高志

中小企業DX推進研究会 代表

 

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中小企業DX推進研究会 代表 セブンセンス株式会社 取締役 DX支援部 部長

2005年アイクスグループ(現セブンセンスグループ)入社。シンクライアントシステム、ペーパーレスシステムなどの導入と構築・運用に携わるとともに、業務フローにITを組み込むことを強み会計事務所のシステム導入サポート、コンサルティングも行う。

著者紹介

連載中小・零細企業の働き方改革!即実践できるデジタルトランスフォーメーション導入事例

中小企業のDXは会計事務所に頼め!

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