期待していた求人サイトだが、応募はまったくなく…
【飲食業(従業員30名)の事例】
この会社では、とある駅の周辺でカフェを数店舗経営しています。地域に根ざした昔ながらの「喫茶店」で、地元で知らない人はいません。朝5時から営業しているため、出勤途中の会社員などが朝食に立ち寄ります。近年課題になっていたのは、朝5時から働いてくれるアルバイトを確保できないことでした。
そのため創業者である社長みずから、毎朝店に立っているありさま。求人情報誌などを使って粘り強く募集を続けていましたが、早朝のアルバイトはどうしても集まりませんでした。早朝から営業することで「地元のお客様に寄り添って、いろいろなニーズに応えられる」と考えてがんばってきた社長ですが、「営業時間を変えるしかないのか」と悩んでいました。
新たな求人の方法として会計事務所から紹介されたのは、日本で最も多くの求職者が集まるといわれる求人サイト「Indeed(インディード)」でした。掲載費用、採用成功報酬等、すべて無料で求人を掲載することができ、ほしい人材の条件などを記載する求人票は、Webサイトから入力するだけなので、すぐに始めることができます。より有利な掲載を希望するならば、有料のプランに移行するのも簡単です。
期待していた求人サイトでしたが、掲載当初はまったく応募がありませんでした。このままでは状況は良くなりません。そこでお店のお客様や従業員からアイデアを集めながら、「本当に早朝に働きたい人はいないのか」、「朝の時間帯に働けるのはどういう人か」などディスカッションを重ねました。それに基づいて求人票に記載するキーワードを試行錯誤し、反応を確認するという作業を繰り返したところ、徐々に閲覧数も増え、応募も集まるようになってきました。
その結果、まず1名の採用に成功しました。早朝のアルバイトを獲得できたことで、社長の時間的な負担も減りました。何度も求人票を修正できるWebメディアは、反応を見ながら「手」を打つことができるため、この会社の人材探しには適した方法だったといえるでしょう。一定の手応えを得られたので、社長はこれからも採用活動を続けていこうと考えています。
同時に、ディスカッションをしたことにより、社内における働き方を見直す機会にもなりました。たとえば、「朝5時から働く」ということは、人材募集におけるネガティブな要素だと思っていましたが、「早朝から働けるチャンス」とポジティブにとらえる人や、「早朝なら働ける」という事情の人もいることに気づいたことも、大きな成果でした。社長は、これまで大事にしてきた「5時開店」というスタイルを、今後も続けていきたいと考えています。
改革をするには、社外のノウハウを活用することが一つのカギになります。でも社内の情報をもう一度見直し、しっかり分析することも同様に重要です。期待する成果を得るには、適したツールと情報の整理の両方が大事なのです。
自社HPに「SEO対策」をすると…閲覧数大幅UP
【人材派遣業(従業員20名)の事例】
人材派遣業のこの会社は、「寮付き」というユニークな求人をしています。入社すると、同社所有の寮に入ることができ、そこから派遣先に通勤することができます。人材募集のほとんどは、求人誌に依存しています。自社のホームページ(HP)でも募集していますが、こちらを見て応募する人はごく少数。全体の応募者数をもっと伸ばしたいと考えていましたが、コストがかかる求人誌への出稿を増やし続けることは不可能です。
また求人誌に依存しすぎることにリスクも感じており、求人誌と自社HPの応募者を半々にしたいという希望もありました。それにはHPからの応募を増やさなければなりませんが、どのような手を打てばいいのか分かりませんでした。
状況を会計事務所に説明したところ、自社HPの「SEO(Search Engine Optimization)」と「Google(グーグル)広告」を併用するという提案を受けました。自社HPを持っている方なら、SEOはすでに実践しているかもしれません。しかし、せっかくHPを作って、SEOもしているはずなのに「あまり閲覧されない」という悩みもまた、珍しくないでしょう。
検索結果の最初のほうに表示されなければ、なかなかクリックされないため、情報を見てもらえません。検索結果は、検索に用いられたキーワードに適しているWebサイトから順に表示される仕組みなので、検索エンジンに「適している」と判断されるようなHPを作っておく必要があるわけです。
グーグル広告は「リスティング」といわれる広告の手法で、あるキーワードで検索された場合に、検索結果の画面に広告が表示される仕組みです。「どんなキーワードのときに表示するか」を指定することができ、自社の商品やサービスに関連することに興味を持っている人に絞って、広告を出すことができます。この会社の場合は、まず自社HPを訪問してもらわなければ始まりませんから、SEOに最適化された新たなWebサイトを作りました。
グーグル広告では「寮付き」という特徴が他社との差別化になると考え、「仕事」と「住む場所」を両方探している人が検索しそうなキーワードを選定しました。社内に専任の担当者を置き、会計事務所のパートナーと一緒にキーワードを検討したり、グーグルが無料で提供しているツールを活用して、検索画面での表示順位や自社サイトの訪問者の行動を確認したりしながら、必要な改善を行っていきました。
その結果、応募者は増加。応募者1人当たりの募集コストも抑えることができ、費用対効果の面でも満足な結果でした。また、リスクを感じていた求人誌への依存についても改善され、応募者の約半数は自社のWebサイトから獲得できるようになりました。社内に専任の担当者を置いたことも良い結果を生みました。SEOやリスティング等の知識を持っていたわけではありませんが、担当者になったことでリテラシーも高くなり、人材育成という面でも成果を得ることができました。
SEOはHPの訪問者を増加させるためには必要な施策です。インターネット上にもさまざまな情報がありますが、理想的なSEOが実践できているところは少ないのが実情です。HPがあるだけでは、見てもらうことはできません。SEOや検索エンジンに詳しいパートナーと一緒に、SEO、広告、監視と、トータルに取り組むことが効果を最大化させる近道です。
「仮装会議室」をつくるオンラインミーティング
【専門サービス業(従業員3名)の事例】
新型コロナウィルスの影響で、移動やミーティングは極力避けなければならない状況になりました。定期的に実施していた会議や、お客様との打ち合わせなども行えず、「仕事が進まない」、「効率が悪い」とお困りになった方も多いのではないかと思います。
この会社も、仕事の特性上、ミーティングは非常に重要でした。業界に特化した業務改善支援などを手掛けており、お客様と一緒にプロジェクトを進めるには密な連携が欠かせないからです。電話やメールという手段もありますが、直接会話をし、空気感や微妙なニュアンスも共有できるミーティングには及びません。
そこでこの会社が導入したのは、オンラインでミーティングができるツール「Zoom(ズーム)」です。同様のツールは他にもありますが、ズームはとても手軽に使えることから、利用者が急増しています。ミーティングの主催者はアカウント登録が必要ですが、ミーティングに招待される人は、メールで送られてくるURLをクリックするだけ。パソコンやスマートフォンなどから参加することができ、画面に出席者全員の顔が映し出され、遠隔地にいながら「仮想会議室」を作ることができるのです。
通常、対面のミーティングで、主催者が時間と場所を参加者に連絡し、連絡を受けた参加者が会議室に行くのと同じです。会議室で「この資料を見てください」とプロジェクタに映すのと同じ感覚で、自分のパソコンに表示した資料の画面を全員で共有することもできます。
この会社では、オンラインミーティングを活用したことによって、コロナ禍でも滞ることなくプロジェクトを進めることができました。それだけでなく、プラスの効果もありました。これまでの全国を飛び回るという仕事のスタイルでは、移動の負担は相当なものでしたが、時間的にも、体力的にも余裕が生まれ、新たな知識の習得や、情報収集などに当てられるようになりました。
支援する側の知見やスキルが高まることは、お客様にとってもプラスです。社長は、対面の自粛が不要になっても、今後のミーティングの一つの方法として、活用していきたいと考えています。
対面の機会を減らすには、営業やコンサルタントなど「お客様に会う」ことが重要な仕事も、方法を変えざるを得ません。オンラインミーティングは、時間も交通費も削減できるというメリットがあり、今後はスタンダードになるかもしれません。オンラインミーティングでは、イヤホンマイクを使うとお互いに聞き取りやすいのでお勧めです。
山口 高志
中小企業DX推進研究会 代表
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】