小学校ではプログラミングを学習課題として扱う
では、実際に、小学校ではどんな教育が行われるのでしょうか。文部科学省が詳細な学習内容を授けているわけではありません。主な指導の時間は「総合的な学習」においてであり、たとえば、「総合的な学習の時間において、『プログラミングが社会でどう活用されているか』に焦点を当て、企業と連携しながら行う指導例」として、次のようなことを挙げるなど、自由な発想でプログラミングを学習課題として扱うことを望んでいるようです。
●自動車メーカーと連携する指導例
情報技術を生かした最新の自動車や安全な社会に向けたものづくりに携わる人々との関わりを通して、情報技術が人々の生活や生産活動の改善に向けて生かされていることに気付くとともに、情報技術の進展と豊かで安全な生活について考え、その実現に向けて取り組む。
●住宅メーカーと連携する指導例
私たちの住む家の仕組みを調べたり、暮らしやすい家づくりを提案したりする活動を通して、住まいにおける快適な暮らしには、取り巻く環境に配慮し、多様なライフスタイルや一人一人のニーズに応じた工夫が存在することに気付き、情報技術によって豊かで人と人との関わり合いのある生活を実現する家づくりについて考える。
●インターネット関連企業と連携する指導例
自分たちの住むまちの魅力を調べ、その魅力についてチャットボットを活用して発信する活動を通して、自分たちのまちにはいろいろな魅力があることやプログラミングを使った情報発信のよさに気付き、自分たちの住むまちの問題を自分事として捉え、その解決に向けて自分にできることを考える。
※以上、令和元年9月に設定された「未来の学びプログラミング教育推進月間」(みらプロ)において取り組まれた実践を基に作成
まずは、こうしてプログラミングを身近に感じること、そして、特にこれまで意識していなかったプログラミングが、世の中のあらゆるところに使われていると実感することがねらいなのでしょう。
実際のプログラミングも小学生のうちから体験できます。たとえば、小学校5年生の算数で、プログラミングで正多角形を正確に書く体験を文部科学省は提案し、すでに実施している学校もあります。図形を構成する要素に着目し、プログラミングを通して正多角形を書くのです。ここでは、正多角形について、「辺の長さがすべて等しい、角の大きさがすべて等しい」という正多角形の意味を用いて作図できることを、プログラミングを通して確認します。そして、定規を使って書いてもきれいに書けない正多角形を、コンピュータであれば容易に書けることを発見します。
この他、プログラミングでできることはたくさんあります。たとえば、料理の手順を、プログラミングの思考に合わせて考えていく、という学習もできます。また、建築の世界を見せることでもわかりやすいでしょう。建物を建てる段取りを示します。最初に土台をつくってその上に木を乗せて柱を立てて屋根をつけ、壁を立てる。この工程で建物を建てるとして、どの材料をどのタイミングで運んだらいいのか、その段取りは、プログラミングすれば、簡単に最適化することができます。
クリティカルパスと呼ばれる、開始から終了までの全作業を作業順序に従ってつないだ中で最長時間の経路を見つけ出し、その経路を短縮することで全工程を短縮できるなど、そこには実践に役立つさまざまな学びがあります。冷蔵庫の中の整理にも使えます。賞味期限の近いものから使っていく。そこでできあがる可能な組み合わせから、今晩の料理に使えるレシピを提示することもできる。そのレシピには「これが足りないから買ってきましょう」という提案もできるのです。
プログラミングによって、日々の暮らしがより便利で楽しくなるということを実感するのが一番の狙いでしょう。
柳沢 幸雄
東京大学名誉教授
北鎌倉女子学園学園長
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