「介護してたからね」で遺産分割に納得のはずが…
母親の遺産は、父親が残してくれた家と土地、そして現金が2000万円ほどありました。Fさんは、土地と家をもらう代わりに、現金は弟2人で分けるという形でどうかと提案しました。家と土地は合わせて3000万円程度の評価で、しかもFさんは長い間寝たきりだった母親の面倒をずっと見てきたこともあり、弟2人は不満もなく納得して帰りました。
ところが、その後1カ月ほど経ってから、弟の1人が「もう少し遺産がほしい」と言い出しました。相続人は子ども3人なんだから、3等分すべきだというのです。
よくよく聞いてみると、弟の嫁が後ろにいてたきつけているようです。弟の嫁は、美容室をやっており、やり手で通っているのですが、店舗を拡大しすぎて、経営があまりうまくいっていないともいわれていました。
兄弟3人で資産を3等分するためには、現在Fさんが住んでいる家を処分して現金にしなくてはならなくなるので、Fさんは困り果てました。とりあえず、家庭裁判所に調停を申し立てることにしましたが、「こんなことなら、お母さんに遺言書を書いておいてもらえばよかった…」と後悔しています。
「母は、私が一緒に住んでいたから、この家は私が継ぐという前提で何もかも進めてきたのです。私が、母のわがままに耐えることができたのも、ある意味でそういう前提があったから…。弟も、気の強い嫁さんで困っているみたいだけど…」
結局、家庭裁判所の調停が始まってから半年以上経ちますが、話し合いでは結論がつきそうもなく、このままでは裁判所の審判を仰ぐしかなさそうです。
こうした事例は、いずれも「遺言書」を残しておけば防ぐことができたトラブルですが、相続が「争続」になってしまうと予想できる人は、やはり遺言書をきちんと残しておくことが重要といえます。例えば、再婚した人、内縁関係が続いている人といった具合に婚姻関係が複雑な人は、遺言書を残しておくべきでしょう。
一方、こうした複雑な事情がなくても「相続トラブル」は起こるものです。これまで実際に取り扱ったケースの中には、子ども同士でもめてしまうケースもありました。