中小企業がIPOを目指すメリットとは?
■IPOのメリット
IPOのメリットとIPO後の責任は表裏一体の関係で、メリットを享受する代わりに情報開示や事務負担を上場会社の責務として負わなければなりません。まずは、IPOの主なメリットを以下に列挙します。
(1)資金調達力の向上、財務内容の充実
(2)知名度、信用度の向上
(3)人材確保の優位
(4)従業員の士気向上
(5)社内管理体制の強化
(a)組織的な運営
(b)会社の評価の確立
(c)パブリックカンパニーとしての確立
(6)事業承継の円滑化
IPOを目指す経営者はどんなメリットを享受するために上場準備に着手するのか考察してみると、やはり、「資金調達の向上」が一番大きなメリットといえるでしょう。あとは、「知名度の向上」による商流の増加や「優秀な社員の増加」が、主なメリットとなりますが、上場を果たした社長にインタビューするとメリットとして「内管理体制が強化されたことに満足している」と応えている方が多いことも事実です。あと、忘れてはならないのが「創業者利潤の確保」です。IPOは社長が意思を固めなければ成立しないプロジェクトであり、社長にとって「創業者利潤の確保」は非常に大事な要素となります。
■IPO後の責任
IPOのメリットを継続的に享受できる反面、IPOを実現することにより、経営者は投資家や株主などのステークホルダーの信頼に応えるために相当な情報開示などの責任を全うしなければなりません。IPO後の責任について以下に列挙します。
(1)会社情報の開示義務
(2)IR(インベスター・リレーションズ)
(3)金融商品取引法・上場規程等の遵守すべき法令・規則の拡大
(4)株主管理への配慮
(5)社内体制整備
IPOをゴールと捉える経営者はそもそも上場会社となる資質のない経営者であり、IPO後に重くのしかかる責任を果たすことができません。経営者がIPOを選択するということは、IPOを機会に我が国で400万社以上ある会社のなかで上場企業3,600社の1社に選ばれる(公器になる)という自覚や、自分以外の株主に対し適時に経営に関するあらゆる事項の説明を必要に応じて行わなければならないという現実の受け入れはもとより、上場後の企業成長を約束し、実現できるものだけが新規で株式を公開できるという認識を強く持たなければなりません。
実例としてKudan株式会社を見てみましょう。コンピュタビジョン技術の開発とライセンス提供を行っているKudan株式会社は売上3億円で上場し、時価総額1,600憶円まで到達しました。上場前の開発費用は個人投資家やベンチャーキャピタルが支え、上場審査に耐えうる管理部門を充実させ、見事に上場を成し遂げ成長資金を株式市場から享受しました。知名度は各段にあがり商流も拡大し続けているとお聞きしております。まさにIPOによるメリットを享受できた事例といえるでしょう。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】