●2016年の米大統領選後は政策期待で、2017年は税制改革の推進で、米国株は大きく上昇。
●2018年は米中貿易摩擦問題で株安、2019年は米中対立激化も、FRBの連続利下げで株高。
●2020年はコロナ渦でハイテク中心に上昇、長期的な株価動向はやはり金融・財政政策がカギに。
2016年の米大統領選後は政策期待で、2017年は税制改革の推進で、米国株は大きく上昇
今回のレポートでは、トランプ米政権の4年間を振り返り、米国株はどのように動いたかを検証します。はじめに、前回の米大統領選挙後の反応を確認します。2016年11月8日の米大統領選において、トランプ氏の勝利が決定すると、同氏の大規模減税などの政策を好感して世界的に株価が上昇し、いわゆる「トランプ・ラリー」と呼ばれる現象が発生しました。米国でも年末にかけて主要3指数がそろって大きく上昇しました(図表1、2)。
2017年のトランプ米政権1年目も、米国株の堅調推移が続きました。トランプ氏はこの年、中間所得世帯を中心とする減税や、法人税率の引き下げを柱とする税制改革を推進し、ダウ工業株30種平均など主要3指数は年間で2ケタの上昇となりました。また、業種別では、情報技術の上昇率が36.9%と最も大きく、市場で「GAFAM」と呼ばれるアルファベット(グーグル持ち株会社)など5銘柄も大幅高となりました。
2018年は米中貿易摩擦問題で株安、2019年は米中対立激化も、FRBの連続利下げで株高
2018年の政権2年目において、トランプ氏は通商政策で対中強硬姿勢を鮮明にし、米中貿易摩擦問題が株式市場の懸念材料となりました。また、同年11月6日の米中間選挙では、民主党が下院の過半数議席を奪取する結果となりました。この年、米主要3指数はそろって下落し、業種別ではヘルスケアと公益事業を除く9業種が、また、GAFAMではアルファベット、アップル、フェイスブックが、それぞれマイナス圏に沈みました。
2019年の政権3年目において、トランプ氏は中国製品に対する制裁関税を段階的に導入し、米中貿易摩擦問題は一段と深刻化しました。こうしたなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は、貿易問題を巡る不確実性を挙げ、7月、9月、10月と、連続利下げに踏み切りました。その結果、この年の米主要3指数はそろって2ケタの上昇となり、業種別では11業種全てが、また、GAFAMも5銘柄全てが、大幅高となりました。
2020年はコロナ渦でハイテク中心に上昇、長期的な株価動向はやはり金融・財政政策がカギに
2020年の政権4年目は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、金融市場は世界的に大きく混乱しました。しかしながら、米国では大規模な経済対策と積極的な金融緩和により、株式市場はほぼ落ち着きを取り戻しています。ただ、コロナ禍による生活様式の変化で、非対面・非接触の機会が増えるなか、主要3指数ではハイテク株中心のナスダック総合株価指数、業種別では情報技術、そしてGAFAMの強さが突出しています。
トランプ米政権の4年間で米国株は大きく上昇しましたが、その原動力となったのは、当初はトランプ減税であり、その後の米中貿易摩擦という悪材料は、FRBの連続利下げで緩和されました。また、コロナ・ショックは積極的な金融・財政政策を呼び、結果的にハイテク株の急騰につながりました。来月の大統領選挙で、トランプ氏、バイデン氏、どちらが勝利しても、長期的な株価の方向性は、やはり金融・財政政策がカギを握ると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トランプ米政権の4年間を振り返る~米国株はどう動いたか』を参照)。
(2020年10月21日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト