動かぬドル円を動かす材料を考える

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●コロナ・ショックで春先乱高下したドル円だが、政策効果で相場が落ち着き、最近は膠着感が強い。

●米大統領選の結果判明遅延ならドル安・円高、ただ101円台を大きく超える展開は見込み難い。

●選挙で不透明感払拭ならドル高・円安だが米長期金利上昇は限定的とみられ110円台は遠い。

コロナ・ショックで春先乱高下したドル円だが、政策効果で相場が落ち着き、最近は膠着感が強い

ドル円相場について、年初から足元までの動きを振り返ってみると、1月1日は1ドル=108円61銭付近で取引が始まり、しばらくドル高・円安の流れが続きました。2月20日には、一時112円23銭水準をつけたものの、直後にコロナ・ショックが発生し、リスクオフ(回避)の円買いが強まると、3月9日には101円19銭水準まで一気にドル安・円高が進行しました。

 

その後、リスクオフの度合いが増し、基軸通貨である米ドルを選好する動きが急速に強まると、ドル円はドル高・円安方向に反転、3月24日には111円71銭水準をつけました。ただ、多くの国々で、積極的な金融・財政政策が実施されたことから、金融市場は4月以降、次第に落ち着きを取り戻しました。ドル円も、ここ3カ月の値幅は3円50銭程度にとどまっており、やや膠着感が強まっています。

米大統領選の結果判明遅延ならドル安・円高、ただ101円台を大きく超える展開は見込み難い

膠着感が強まったことで、ドル円は2月20日につけた112円23銭水準と3月9日につけた101円19銭水準を起点とする「三角保ち合い(さんかくもちあい)」を形成しています(図表1)。テクニカル分析によれば、ドル円が三角形の頂点付近で下値支持線を下抜けるとドル安・円高方向の動きが加速し、上値抵抗線を上抜けるとドル高・円安方向の動きが加速すると解釈されます。

 

ドル円は年内にも三角形の頂点付近には到達するため、時期的に米大統領選挙を機に、下値支持線の下抜け、あるいは上値抵抗線の上抜けが予想されます。下抜け(ドル安・円高)の材料としては、選挙結果の判明が大幅に遅れることなどが考えられますが、この場合、米ドルも買われやすくなることや、大統領はいずれ決まることを踏まえると、3月9日につけた101円19銭水準を超える大幅なドル安・円高の進行は見込み難いと考えます。

選挙で不透明感払拭ならドル高・円安だが米長期金利上昇は限定的とみられ110円台は遠い

一方、選挙結果が比較的早い段階で判明すれば、政局の不透明感が払拭され、上抜け(ドル高・円安)の材料となる公算が大きいと思われます。また、米追加経済対策が決まらないまま選挙を迎え、バイデン氏が勝利し、上下院とも民主党が多数議席を占めるという結果になれば、経済対策の規模(民主党案の2.2兆ドル)への期待から、これも上抜け材料になるとみています。

 

このケースでは、米国において株高と長期金利上昇が見込まれますが、市場は米金融当局によるゼロ金利政策の長期化(図表2)を織り込んでいるため、米長期金利の上昇は限定的となり、ドル円は110円台の回復も容易ではないと考えています。したがって、ドル円相場が年内に三角保ち合いを上下いずれの方向に抜けたとしても、年初来の値幅(101円19銭水準〜112円23銭水準)内におさまる可能性が高いと予想しています。

 

(注)データは週足で2020年1月3日までの週から10月9日までの週。下値支持線は2020年3月9日のドル安値と9月21日のドル安値を結んだ線。上値抵抗線は2020年2月20日のドル高値と6月5日のドル高値を結んだ線。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドル円の下値支持線と上値抵抗線 (注)データは週足で2020年1月3日までの週から10月9日までの週。下値支持線は2020年3月9日のドル安値と9月21日のドル安値を結んだ線。上値抵抗線は2020年2月20日のドル高値と6月5日のドル高値を結んだ線。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)2020年9月16日時点。ドットチャートの政策変更は予想中央値が示唆する政策変更の回数。 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]FRBのドットチャートとフォワードガイダンス (注)2020年9月16日時点。ドットチャートの政策変更は予想中央値が示唆する政策変更の回数。
(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『動かぬドル円を動かす材料を考える』を参照)。

 

(2020年10月13日)

 

市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧