観賞用マンションを購入するほど骨董品が好き・・・
十津川倉庫の十津川社長は若い頃から骨董品が大好きだった。
仕事を始めた頃は貧しく、気に入った壺や掛け軸などを見つけても買うことができなかったが、50代になって経済的な余裕ができると大金をつぎ込むようになった。見かねた妻と大喧嘩になり、買い集めた貴重な骨董品を捨てられてしまったことがある。
そんなことで諦められない十津川社長はその後、密かにマンションを借りた。さらに、もう一度骨董品を買い集め、広いリビングいっぱいに陳列スペースを設けた。
かけたコストの総額は高級外車が買えるほどだ。休みの日にはマンションに通い、骨董品を眺めながら一杯飲むのが至福のひとときだ。
趣味を通じた仲間もでき、時々彼らを招いて骨董品談義に花を咲かせることもある。みな十津川社長のコレクションを素晴らしいと絶賛。集めたアイテムの中には有名作家の壺などもあるため、その価値は数千万円になるのではと評価する人もいた。
妻に骨董品コレクションがバレたら捨てられてしまう!
まだまだ充実させたいと趣味に燃える十津川社長だったが、最近になって健康面で異変が起きた。久しぶりに受けた健康診断で頭部に動脈瘤が見つかったのだ。医師は手術をすれば治ると言いながら、大きな手術だけに危険性はあると付け加えた。
十津川社長にとって心配なのは骨董品のことだ。もしものことがあったら、妻はその存在に気づくだろう。その場合には腹立ちまぎれにまた捨てようとする可能性が高い。
どうせなら同じ趣味を共有する仲間に贈りたいが、価値の高いものだけに死因贈与すれば、相続税の申告書に記載されてしまい、結局は妻に知れてしまう。「奧さんに乗り込まれるのは嫌だよ」と趣味仲間は逃げ腰だ。
医師には早めの手術をすすめられているが、十津川社長の悩みは深い。
[図表]趣味の骨董品を隠している社長
この話は次回に続く。