「赤ちゃん用のサプリメント」を活用する選択肢も
しかし、たとえば北海道や東北地方に住んでいる秋冬生まれの赤ちゃんは、完全母乳育児の場合、日光浴だけでビタミンDを補うのは難しいかもしれません。その場合は、サプリメントを飲ませるという方法もあります。たとえば、赤ちゃんが生まれると、病院でビタミンKのシロップをもらって飲ませますね。ビタミンKが不足すると、出血を起こしやすくなるからです。ビタミンDについては病院でもらうことはありませんが、乳児用のビタミンDサプリメントも販売されています。アメリカでは、母乳栄養の赤ちゃんにビタミンDのシロップを飲ませることが推奨されています。
しかし、赤ちゃん用のサプリメントは、まだまだ浸透しているとはいえないようです。たしかに、赤ちゃんに毎日サプリメントのシロップを飲ませるのは、抵抗がある方も多いのかもしれません。
そこで、授乳中のママにビタミンDサプリメントを飲んでもらうことで、母乳を通して赤ちゃんに十分なビタミンDを摂らせてあげることができるかという研究が、2015年にアメリカで行われています※7。この研究では、母親に1日160マイクログラムのサプリメントを飲ませると、赤ちゃんに1日10マイクログラムのサプリメントを直接飲ませるのと同じくらい、赤ちゃんの血液中のビタミンD濃度が上昇することがわかりました。しかし160マイクログラムというのは、かなり多い量です。ビタミンDが過剰になると、血液や尿中のカルシウム濃度が高くなり、腎結石のリスクが上昇するといわれています。この研究ではビタミンD過剰の症状が出た人はいませんでしたが、厚生労働省によるビタミンDの摂取基準量は、授乳婦は1日8.0マイクログラム、成人の上限は1日100マイクログラムです。これを考えると、ママが多量のビタミンDサプリメントを飲むよりは、赤ちゃんにサプリメントを飲ませてあげたほうが、合理的ではないかと思います。
まず大切なのは、紫外線をこわがりすぎず、離乳食は遅らせないこと。そしてお住まいの場所によっては、赤ちゃんのサプリメントを検討してもいいかもしれません。
【出典】
※1 日経メディカル.母乳だけで育つ乳児の75%がビタミンD不足
※2 日本経済新聞夕刊 「くる病」乳幼児に増加 ビタミンD欠乏が原因 2015/04/16.
※3 厚生労働省.日本人の食事摂取基準2015年版 [https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html]
※4 Butte NF, Lopez-Alarcon MG, Garza C. Nutrient adequacy of exclusive breastfeeding for the term infant during the first six months of life. 2002.
※5 日本小児皮膚科学会.こどもの紫外線対策について [http://jspd.umin.jp/qa/03_uv.html]
※6 国立環境研究所.体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 [https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/2013
0830.html]
※7 Hollis BW, Wagner CL, Howard CR, Ebeling M, Shary JR, Smith PG, et al. Maternal versus infant vitamin D supplementation during lactation: a randomized controlled trial. Pediatrics. 2015 Oct;136(4):625-34.
森田 麻里子
医師
Child Health Laboratory 代表
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