争族、離婚トラブル、労働問題…弁護士事務所には今日も様々な相談が舞い込みます。そこで本連載では、弁護士法人アズバーズ代表の櫻井俊宏氏が、実際に寄せられたトラブル事例を紹介し、具体的な対策を解説します。 ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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以前まで「30万円のペナルティ」だけだったが…

相手方の勤務先の給与を差し押さえることもできます。ただ、給与が44万円以下の場合は、通常その4分の1までになります(養育費の場合は2分の1。民事執行法152条)。44万円以上の部分に関しては差押の対象になります。差し押さえられた者の生活に必要な収入をある程度は確保させるためです。

 

なお一度給与の差押に成功すると、差し押さえられた者は、毎月、勤務先の会社において差押分を引いた給与が支給されます。差押分のお金は差し押さえた者に対して支払われます。

 

しかし、差し押さえられた者が会社を辞めてしまうと効力を失うので注意してください。ほかの会社に移ったのなら、もう一度新しい勤務先を調べ直し、差押をし直す必要があります。

 

さらに、不動産に対する強制執行や自動車に対する強制執行等もできます。

 

4 財産開示の手続

 

各強制執行の方法について解説しましたが、結局この強制執行の対象を探し出すのが一番難しいのです。

 

昔は探偵を雇って預金口座の情報を探すこともありました。しかし現在は、個人情報保護が厳しくなっているので、探偵により預金口座の情報を探し出すことは厳しくなっています。

 

 

裁判所を利用した法的方法としては「財産開示」という手続があります(民事執行法196条以下)。一度強制執行の申立をしてもうまくいかなかったときは、裁判所の主導のもと、債務者を裁判所に呼び出して、財産内容を報告させる手続です。

 

財産開示手続は、以前まで債務者が裁判所に出頭しなかった場合や、虚偽の事実を話した場合でも、30万円の過料のペナルティのみでした。この過料というのは犯罪ではなく前科にもならないので、債務者は、実際ほとんど裁判所に出頭しませんでした。たとえ出頭しなくても、裁判所側は積極的に支払わせようともしません。

 

このことから、財産開示手続は旧法ではほとんど使われませんでした。しかし、法が改正され、罰則が強くなったのです。

 

5 民事執行法の改正

 

これまで述べてきたとおり、強制執行は「相手方の財産の情報が求められる」「預金口座について担当支店まで調べなくてはならない」「給与を差し押さえても会社が変わった場合は再度差押をする必要がある」等、なかなか簡単にはいかない面がありました。

 

このことから改正が行われ、2020年4月1日から施行された民事執行法ではいくつかの強制執行方法が強化されています。

次ページ改正によって「泣き寝入り状態」は減ることに

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