企業出版は「書籍の流通開始」が真のスタート
企業出版で制作した書籍を、悩みや課題を抱えて書店にやって来る読者とどうマッチングさせるかは重要な課題です。そのため、読者にその書籍を手に取ってもらうためのプロモーション活動に大きな力を注いでいます。
このプロモーションについて、他の出版社ではあまり力を入れていないように見受けられます。書籍が完成すれば終わり、というのが基本姿勢になっている場合、時間と労力をかけて売り込もうという意識が働きにくいのだと思います。
私たちの基本スタンスは異なります。プロモーションについては以前にも触れましたが、私たちの企業出版は印刷・製本がゴールではなく、その後の流通が本当のスタートになります。
幻冬舎メディアコンサルティングでは、プロモーション部という専任組織がすべての本のプロモーションを担当します。
プロモーションには「ペイドパブリシティー」と「ノンペイドパブリシティー」があります。ペイドパブリシティーは広告です。たとえば書籍の新聞広告であれば、日本経済新聞や朝日新聞、毎日新聞などの全国紙のほか、著者が経営する企業の地元地方紙などにも広告を出します。
ノンペイドパブリシティーは情報発信です。新刊を紹介するために、こんな本が出ました、著者のインタビューも可能ですといった情報を、TV、新聞や雑誌、Webなどさまざまな媒体に提供します。書籍そのものと、書籍の著者(専門家)という2つの側面で告知するのです。そうして書評で取り上げてもらったり、著者インタビューを受けられるようにしたりと、いろいろ仕掛けていきます。
メディアは書籍を出している専門家を探している
テレビや雑誌などのメディア関係者は、いまの時代を映す社会問題を解説したり、問題提起できる専門家を常に探しています。書店やAmazonで「大手出版社から書籍を出している人」を選ぶのはメディア業界の常識です。そうしたニーズとうまくマッチングすれば、積極的に取り上げてくれます。1つのメディアが取り上げると、2つ、3つとメディアが増えていき、大きな相乗効果が生まれます。そうなると著者のテレビ出演なども実現する可能性があります。
多くのメディアで紹介されると、当然たくさんの人の目に留まりますから、読者、つまりは企業のターゲットに知ってもらえる確率が上がっていきます。
読者に書籍を手に取ってもらうためにもう一つ、書店プロモーションにも力を入れています。新聞広告や各種メディアへの露出はマスマーケティングですが、書店プロモーションはエリアマーケティングです。いわば局地戦です。エリアを絞り込み、そのエリア内の書店に来た人に書籍を知っていただき、手に取ってもらうための手段としてのプロモーションです。
たとえば、著者が弁護士事務所だとすると、その事務所のある新宿区や渋谷区は絶対に押さえたいとか、不動産投資の会社ならば港区や渋谷区は確実にリーチしたいといった要望が企業ごとにあります。そこでエリア内の書店を選定し、ポスター付きで大々的な平積みや面出しを促す、売り上げランキングへの掲載を狙うといった仕掛けをしていきます。こうした書店プロモーション用のツールを私たちは数多く持っているのです。
タイトル、表紙に「徹底的にこだわり続ける」ワケ
以前、書籍作りのプロセスでは書店の「書棚」を重視していると述べました。タイトルをつける上で極めて重要になるからです。書籍がしかるべき書棚に置かれ、ターゲットである読者をきちんと待ち構えておくために、その書棚に適したタイトルでなければいけません。
加えて、表紙も大事になります。タイトルとともに、読者が手に取りたいと思うような、または手に取らざるを得ないようなデザインを私たちは追求しています。
そのため私たちの手がける書籍は、すべて幻冬舎デザインプロというデザイン専門のグループ会社が担当します。私たちが企業の内部に入り込んで、その強みを徹底的に把握して書籍を作るのと同様に、幻冬舎デザインプロも企業の内部に入り込み、企業の強み、哲学や思考などを理解した上で、表紙に反映させます。もちろん、デザインには読者の視点も反映します。
書籍の流通に関してもう一つ付け加えるならば、書籍の発行元と発売元が同じ出版社かどうかも大事なポイントです。出版社の中には、書籍をつくる発行元と、書籍を売る発売元が別々のケースがあります。発行は自社で行うけれども、発売は外部の出版社に委託するというものです。たとえばビジネス書なのに、発売元がビジネス系にあまり強くない出版社ということもあります。そうすると、書籍の流通会社である出版取次や書店の反応も鈍くなりかねません。
私たちは発行も発売も幻冬舎グループです。当然、私たちが流通で仕掛けていくほうが、そうした発行と発売を分けている出版社に比べて優位であることは明白です。書籍の出版を検討している企業には、出版社を選ぶ際に、発行元と発売元についてもしっかりと確認することをおすすめします。