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バブル景気その1(1985年〜1990年)
日本経済は二度のオイルショックを、自動車や半導体への産業構造の転換で乗り越えた一方、同分野において日米貿易摩擦を引き起こしました。この貿易摩擦が、円高米ドル安を引き起こすプラザ合意へとつながります。プラザ合意後の円高は、変動相場制への移行期以上の円高不況を引き起こし、この不況対策に導入された金融緩和がその後のバブル景気をもたらしました。ここでは、バブル景気の序章となる「レーガノミクス」から「ブラックマンデー」までを見ていきましょう。
レーガノミクス
米国は、1975年に終戦を迎えたベトナム戦争の泥沼化、二度のオイルショックなどにみまわれて、不況とインフレが同時進行するスタグフレーションに陥っていました。1981年に共和党のロナルド・レーガン大統領が実行した経済政策をレーガノミクスといいます。
従来のケインズ型経済政策では、不況になると政府が公共事業などで支出を増やし、経済に流動性を供給することで不況から脱却していました。ところが、インフレを伴うスタグフレーションの場合、流動性の供給はインフレを悪化させることから、ケインズ型の経済政策は採れません。そこで、マネーサプライを抑制しつつ、減税と規制緩和で不況から脱却しようとしました。これはケインズ経済に代わるサプライサイドの経済学と呼ばれ、徹底的に民間活力を高めるものでした。
ところが、レーガノミクスはこれだけではなく、「強いアメリカの復活」を掲げ、軍事力の強化と強い米ドルを目指しました。これにより、軍事費は際限なく増えていき、歳出削減の効果が薄れ財政赤字となるといった矛盾が生じました。また、米ドル高で輸出が停滞し輸出産業中心に企業業績が伸び悩みました。結果として、米国は財政赤字と貿易赤字という双子の赤字に苦しむこととなりました。
プラザ合意
レーガノミクスが米ドル高をもたらした結果、日本からアメリカに対する輸出が急増し、米国の対日貿易赤字が顕著に増加しました。日本は燃費の良さを売り物に日本車の輸出を加速させ、また、コンピューターや半導体の分野においても日本の輸出が急増し、ハイテク摩擦とも呼ばれた貿易摩擦を引き起こしました。
日本以外の欧米諸国が低成長に苦しんでいる中で、一人勝ちの日本に対する不満の高まりは一向に収まりませんでした。そこで、アメリカの双子の赤字を抜本的に解決するために、米国ニューヨーク・プラザ・ホテルに米、英、仏、西独、日本の5ヵ国(G5)の蔵相、中央銀行総裁が集まりました。そして、アメリカを助けるための米ドル高是正が協議され、G5で協力して米ドル安に誘導することが合意されました。プラザ合意の直後、当時1米ドル=240円程度であった為替レートは、あっという間に150円まで円高米ドル安となり、結果として、輸出産業を中心に日本企業の業績が悪化して、深刻な円高不況となりました。
ルーブル合意とブラックマンデー
プラザ合意によって始まったドル安に歯止めをかけるため、1987年2月、先進国7ヵ国(G7)がフランスのルーブル宮殿に集まり、米ドルの為替水準を現行水準で安定させることで合意しました。これがルーブル合意と呼ばれるもので、為替レートを安定させるために、各国は緊密な政策協調を行うことが宣言されました。具体的には、行き過ぎたドル安是正のためアメリカは金利を引き上げ、日本や西独のように米ドルに対して通貨が強い国は金利の引き下げをすることで協調することになりました。
ところがわずか7ヵ月後の1987年9月に、西独がルーブル合意に反して金利の高め誘導を行いました。第一次世界大戦後に天文学的なインフレを経験した西独は、インフレに対して一貫して厳しい姿勢で臨んでいました。この西独の金利引きげが、市場からはルーブル合意を得た各国の政策協調が破綻したと受け止められ、アメリカは更なる利上げを行うとの観測から、10月にアメリカの株式市場は暴落しました。これが「ブラックマンデー」で、ニューヨーク株式市場のダウ30種平均株価指数は前日比508米ドル下落し、この日の下落率は22.6%と、世界恐慌の引き金となった1929年の「ブラックサーズデー」の下落率12.8%を上回りました。当時コンピューターを使った株式取引が普及していましたが、自動売買プログラムによって売りが売りを呼ぶ状況となり、株価下落を加速させました。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 金融/経済史編(7)<バブル景気①>』を参照)。
(2020年7月30日)
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