インドが直面するトレードオフ

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何かを達成するには、別の何かを犠牲にする関係は「トレードオフ」と呼ばれますが、インドには2つのトレードオフが見られます。1つ目はコロナの感染抑制と経済成長、2つ目はインフレ率上昇と金融緩和の間のトレードオフです。インド当局は難しい対応を迫られていますが、感染抑制のための経済制限は緩和を徐々に進める一方で、インフレ率は低下を見守る姿勢と見ています。

インドのコロナ感染者数:インドの感染者数はブラジルを抜き、米国に次ぐ規模に

米ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界全体で新型コロナウイルスの感染が確認された人は、日本時間2020年9国は米国で641万7186人、次いで、インドが456万2414人、ブラジルが423万8446人となりました(図表1参照)。

 

インドの最近の主な経済指標を振り返ると、8月13日に発表された7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で6.93%でした(図表2参照)。8月末に公表された4-6期のGDP(国内総生産)成長率は前年同期比でマイナス23.9%と市場予想のマイナス18.8%を大幅に下回りました。

 

日次、期間:2020年2月13日~2020年9月11日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インドとブラジルのコロナ累積感染者数の推移 日次、期間:2020年2月13日~2020年9月11日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

日次、期間:2017年9月11日~2020年9月11日、CPIは月次、前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インド消費者物価指数(CPI)とルピー(対ドル)の推移 日次、期間:2017年9月11日~2020年9月11日、CPIは月次、前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:トレードオフ、感染者数、ルピー、インフレ率

何かを達成するには、別の何かを犠牲にする関係は「トレードオフ」と呼ばれますが、インドには2つのトレードオフが見られます。1つ目はコロナの感染抑制と経済成長、2つ目はインフレ率上昇と金融緩和の間のトレードオフです。インド当局は難しい対応を迫られていますが、感染抑制のための経済制限は緩和を徐々に進める一方で、インフレ率は低下を見守る姿勢と見ています。

 

まず、インドのコロナ感染と経済の関係を振り返ります。インドが3月25日に開始した全土での都市封鎖は、内容が厳格である上に、当初4月中頃までの予定でしたが、感染収束が見られないことから、(第1弾の)段階的な封鎖解除の開始は6月へ先延ばしされました。この影響で、主要新興国の中で4-6月期のGDP成長率が最も押し下げられたと見ています。内訳では4-6月期の個人消費は前年同期比でマイナス26.7%と1-3月期の+2.7%を大幅に下回り、投資を反映する総固定資本形成もマイナス47.1%と急落しました。

 

これに対して、他国同様財政政策を拡大させたいところですが、インドの財政状況はコロナ前から悪化していたこともあり、消極的です。そこでインドは経済再開を重視、6月から進めてきた段階的な封鎖解除を拡大する一方で、タミルナドゥ州など感染が収まらない地域の封鎖は継続する二段構えです。解除は9月で第4弾となり、デリーなど首都圏では地下鉄が再開しています。段階的な解除で7-9月期は、依然マイナス成長ながら、4-6月期に比べ若干縮小する見込みです。

 

別のトレードオフが、インドの成長率改善を遅らせた可能性もあります。インフレ率の高止まりから、インド中銀が金融緩和に消極的だったことです。例えば、8月の金融政策決定会合では市場は景気の悪さから幅広く利下げを予想していましたが、インド中銀は据え置きました。インフレ目標上限を上回る水準で利下げを手控えたと見られます。また新興国ではインフレ率上昇が消費を抑制する傾向もあるだけに、まずは物価の落ち着きを確認する戦略と思われます。

 

では、物価の落ち着きが期待できるのか? 期待させる要因もあります。価格上昇の背景であった食品価格は気候安定から低下が見込まれます。ルピー高による輸入物価低下も期待されます。インド中銀もルピー高を放置する方針を示唆しています。なお、ルピー高の背景は海外からのインド株式投資が堅調なことと、国際収支の改善があげられます。インド中銀の次の一手は利下げを見込んでおり、現在の様子見姿勢はその準備と見られます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インドが直面するトレードオフ』を参照)。

 

(2020年9月14日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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