「勉強しなさい!」と言われた子の成績が伸びなくなる根本理由

多くの親に共通する悩みは「子どもが勉強を嫌がること」でしょう。「勉強しなさい!」と頭ごなしに叱りつけ、机に向かわせることもできないわけではありませんが、そのようなやり方では子どもの勉強ギライは加速する一方です。ここでは、自ら意欲的に学ぶ子になる「科学的なコツ」を紹介します。※本連載は、中学受験専門塾「伸学会」の代表・菊池洋匡氏、「伸学会」開発部主任・秦一生氏の共著『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』(実務教育出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「勉強しなさい!」と怒られる子は成績が伸びない

子どもには自分から勉強に取り組んでほしい。これはほとんどすべての親に共通する思いではないでしょうか。だからこそ、お子さんがちゃんと勉強しないと、期待を裏切られてイライラしてしまいます。そして、つい怒ってしまう…。

 

しかし、怒って勉強させるという行為は、すればするほどわが子の自発的な勉強から遠ざかります。私どもの塾でも、親が怒って勉強させてきたことで、入塾段階で「勉強は怒られないためにするもの」と思い込んでいる子たちがたくさんいました。親に怒られないために勉強している子たちは、やはり成績が伸びません。

 

お子さんをそんなふうにしてしまわないために、「そもそもやる気とは何なのか、どこから来るのか」を知って、うまく引き出せるようになってあげてください。

 

親が怒れば怒るほど子どものやる気は下がる
親が怒れば怒るほど子どものやる気は下がる イラスト:吉村堂

自主的な勉強には「内から湧き出る“やる気”」が必要

やる気は、外から与えられるやる気と、内から湧き出るやる気に大きく分けられます。専門用語では、それぞれ「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」と呼ばれます。

 

外からのやる気は、自分の行動が外部(他人や環境)の報酬・命令によって生じている状態のことを指します。「成績が悪いと怒られるから(罰を避ける)」「宿題を終わらせたらゲームできるから(報酬を求める)」などが、外からのやる気で動いている例です。

 

イルカが水族館でショーをするとき、1つ芸をするたびにエサをもらっている場面を見たことがあると思いますが、まさにいい例です。芸をすることは、エサを得るための手段に過ぎません。エサをもらえないときに、イルカが勝手に芸をすることはまずないでしょう。

 

一方で、内からのやる気とは、自分の行動が完全に自律的で、興味から生じている状態のことです。「新しい情報を得たい(知的好奇心)」「なぜなのか、物事のつながりを知りたい(理解欲求)」「前よりうまくなりたい(向上心)」などが、内からのやる気に含まれます。

 

子どもたちは、放っておくと1人でも何かをいじり、遊び始めます。これは、エサをもらえるからでも、褒められるからでもありません。暇さえあれば本を読みたがる、楽しさのあまりゲームに没頭して長い時間を費やす、なども同様です。これらは、行動それ自体が目的になっているのです。

 

この2つの動機づけのうち、先に発見されたのは外からのやる気でした。1950年代まで心理学の主流だった行動主義心理学と呼ばれる分野では、動物実験を行いながら学習について研究をしていました。鳥が「押すとエサが出るレバー」を押すことを学ぶなどの実験から、どういう報酬をどのように与えることで人を動かせるかを考えたわけです。ビジネスの世界でも、「人はなぜ働くのか」に対して、経済的動機(つまり給与)がすべてだと考えられていました。

 

しかし、徐々に労働意欲は「職場における良好な人間関係」や、「何かやりがいのあるものをやり遂げたいという欲求」に関係するのではないか、ということが発見されていきます。こうして内からのやる気に注目が集まっていきます。

 

さて、親のみなさん自身は、職場で働くときに、どちらの動機で動いていますか? 「給与のため」「上司に怒られたくない」といった外からのやる気でしょうか。それとも、「やりがいがある仕事で成功したい」「職場の信頼できる仲間と一緒に働きたい」といった内からのやる気でしょうか。

 

これを、そのままお子さんの勉強に当てはめてみてください。みなさんはお子さんに、「怒られたくないから勉強する」と「賢くなりたいから勉強する」のどちらの動機づけで勉強してほしいですか?

 

イラスト:吉村堂

「意欲的に勉強する子」は「賢くなる学習」ができる

多くの人にとって、先ほどの問いの答えは後者でしょう。お子さんにも、「賢くなりたいから勉強する」と考えてほしいと思っているはずです。なぜなら、どちらの理由で子どもが動いているかが、どういう学習法を取るかに関係してくると、誰でも直観的に理解しているからです。

 

内からのやる気で動いている子どもは、深く、持続する学習を実行しようとします。「知りたい」「理解したい」と感じる限り、自分の意欲で取り組み続けます。「こういう方法で学習すれば、より深く理解できる」という話をすれば、それを採り入れようとします。難しい問題に対しても、粘り強く取り組むようになります。

 

外からのやる気で動いている子どもは、浅く、短期的な結果に注目します。怒られたくないから宿題をする子は、怒られないラインを超えさえすれば、そこで学習を打ち切ります。終わらせることが目標になるので、良い方法で学習することを意識しないのです。また、失敗したり、成功の見込みが薄いと感じたりすると、簡単に諦めてしまいます。

 

お子さんに、良い方法で粘り強く学習するようになってほしければ、最後は内からのやる気が生まれるように導いていきましょう。

 

【まとめ】

外からのやる気と内からのやる気の区別を知っておこう。

怒ることで勉強させようとすると、手抜きをするようになる。

中学受験専門塾 伸学会 代表

算数オリンピック銀メダリスト。開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。

10年間の塾講師歴を経て2014年に伸学会自由が丘校を開校し、現在は目黒校、中野校、伸学会Primaryと4校舎を運営。中学受験の第一志望校合格者は4人に1人と言われる中、毎年40%以上の子どもたちを第一志望校に合格させている。

「自ら伸びる力を育てる」というコンセプトで、少人数制のアットホームな雰囲気の中、学力の土台となる人間性から作り上げる指導を徹底。メインとなる中学受験本科コースでは、算国理社以外に「ホームルーム」という独自の授業を実施し、スケジューリングやPDCAといったセルフマネジメントの技術指導に加え、成長するマインドのあり方を育てるコーチングを行う。それらの内容はすべて最新の教育心理学の裏づけがあり、エビデンスに基づいた指導に対し、特に理系の父親たちからの支持が厚い。伸学会の指導理念と指導法はメルマガでも配信し、現在約4500人の悩める保護者が購読。

生徒の9割以上は口コミと紹介とファンになったメルマガの読者から集まっている。著書に『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』(秦一生氏との共著、実務教育出版)がある。

●伸学会HP http://www.singakukai.com/
●Youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCpmIx1eakUt4zHDLTzUF7eA

著者紹介

中学受験専門塾 伸学会 開発部主任

中学受験専門塾伸学会代表・菊池洋匡氏の教え子として開成中学に合格。開成中学・高校では学習をサボって手品に打ち込み、成績では学年でワースト5に入っていたが、大学受験時に一念発起して学年の9割を抜き、東京大学文科三類に合格。

大学でもマジックサークルの会長を務めるほど手品にのめり込んだ結果、一年遅れで文学部を卒業。この成績の乱高下経験から「熱中を自分で意図的に作り出せるかが成功を左右する」と考えるようになったこともあり、教育業界に関わることを決意。

スタッフ研修と保護者向けセミナーを担当。伸学会独自の教科「ホームルーム」のカリキュラムを制作し、生徒が自己管理しながら自主的に学習するための指導法を考案している。

著者紹介

連載子どもの「やる気スイッチ」を押す!小学生の子が勉強にハマる方法

「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法

「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法

菊池 洋匡

秦 一生

実務教育出版

ゲームばかりしてる子も、どんなにイヤがる子でも自分から勉強するようになる! どこの誰でも実践できる、勉強を楽しんで取り組む科学的な“技術”を紹介。 中学受験の第一志望合格率40%(平均合格率25%)を誇る伸学会…

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