子育ての決まり文句「お母さんが子どものころは…」の危うさ

子育てには悩みがつきものです。叱り方やほめ方は適切か、今わが子に教えていることは、将来本当にわが子の役に立つのか…。私たちが子育てで行っていることは果たして本当に正しいのでしょうか? ここでは、世界中で行われてきたさまざまな科学的研究や科学的根拠(エビデンス)のある理論を参考に解答を探っていきます。※本連載は、公益社団法人子どもの発達科学研究所・主席研究員の和久田学氏の著書『科学的に考える子育て エビデンスに基づく10の真実』(緑書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

「経験則」は必ずしも影響力を持つわけではないが…

子どもを叱るときに、「お母さん(お父さん)が子どものころは…」という決まり文句があります。あなたは使ったことがありませんか?

 

「お母さんが子どもだったころは、そのくらいのことを我慢するのは当たり前だった」「お父さんが子どものときは、もっと勉強したものだ」などですね。これらは大人たちが、自分の子ども時代の経験を振り返りつつ、今を生きる子どもに対して「もっとこうすべき」だと言っているわけですが、これはどうなのでしょう。

 

あなたが子どものとき、同じようなことを親から言われた経験はありませんか? もしあったとしたら、そのときどのように思いましたか?

 

子どもが「もっともだ」「自分は親の子どものころに比べて劣っているからもっとがんばらなければ」と思ったとしたら大成功ですが、逆に親の話にまったく賛同できず、聞き流していたとしたらどうでしょう。「親の経験を持ち出されても困る」と、強く反発する場合だってあり得ます。

 

一方、「こうした経験談には説得力があって肯定できる」という考え方もあります。テレビショッピングを例に挙げましょう。雑誌の広告でもかまいませんが、そこではたくさんの経験談が語られています。健康食品について、それを試した人が「ooを飲んだから疲れにくくなった」と話します。運動器具については、「xxを使ったら体重が△kg減った」などと話し、ごていねいにビフォーアフターの映像(ウエスト周りとか!)が流れます。

 

こうした広告が目立つことを考えると、経験談やそこから導き出された経験則(ooは役に立つ/子どものころはxxをするほうが良い)は、人の考えに大きな影響を与える場合と、そうでない場合の両方があると言えるでしょう。

 

ここではそうした経験則の功罪を整理し、とくに子育ての現場においては経験則をどう位置づけるべきなのか、どう利用すべきなのかを考えていきたいと思います。

 

子育てでは「お母さんが子どものころはこうだった」と言いがちだが…(※写真はイメージです/PIXTA)
子育てでは「お母さんが子どものころはこうだったのよ」と諭す場面が多々あるが…(※写真はイメージです/PIXTA)

「語り手の言動・印象」が経験談の説得力を左右する

テレビショッピングの話に戻りましょう。有名人が出演する番組を思い出してください。扱われる商品は健康食品、化粧品、運動器具などさまざまですが、やはり好感度の高い有名人が出演するとそのインパクトはかなり強いように思います。なぜでしょうか。

 

これは、「派生の法則」という現象で説明できます。派生の法則とは、「ある人物の行動がそのまわりのことの評価に波及すること」を意味します。

 

まず、あなたが好ましいと思う人を思い浮かべてください。身近な人でもいいですし、芸能人でもかまいません。想像するに、その人の言動はあなたにとって好ましいものなのでしょうが、その人に対する評価は他のことにも波及していませんか? たとえば、その人の着ている服も好ましいと感じるのではないでしょうか(もちろん服そのものが好きだから、その波及として「その服を着ている人」も好ましくなることがあります)。つまり、ひとつのことへの評価(この場合は「その人の言動」もしくは「服の好み」)は、他のことへの評価に影響するのです。

 

ある人への評価が高まると、趣味、着ている服、乗っている車、住んでいる場所などが好ましいものに思えてきます。その人にかかわるすべてに好印象を抱くようになりがちなのです。

 

子どものころ、好きな先生が教える教科は好きになりませんでしたか? もともと英語が嫌いでも、印象の良い先生が教えるようになってから好きになったというようなケースです。もちろん逆もあります。あんなに好きだった教科が、嫌いな先生が担当になったとたん大嫌いになることもあるはずです。CMには派生の法則を使っているものが多く、人気アイドルがたくさん出演しているのはそういうわけです。

 

だからこそテレビショッピングは、こんな風に語る人に付随した情報(「賢そう」「趣味が良さそう」「正直そう」など)によって、さらに説得力を増すという効果が出てくると言えるのです。

感情・感覚といった「主観」が購買意欲をかきたてる

テレビショッピングで経験談を語る人は、有名人に限りません。どこにでもいそうないわゆる普通の人が自らの体験を語るのですが、それでも説得力があるように思えます。その秘密は、「感情」と「感覚」に関する情報にあるかもしれません。

 

感情とは、うれしい、楽しい、びっくりしたなどの気持ちの動き。感覚とは、気持ちが良いとかさわやかな香りだったとか、いわゆる五感で感じることができるものを言います。

 

健康食品を飲んだら、驚くほど体が軽く感じられるようになった(「驚く」が感情、「軽く感じた」が感覚)。この洗剤を使ったら、きれいになってうれしかった、しかも香りが良かった(「うれしかった」が感情、「香りが良かった」が感覚)。これらが例として挙げられます。

 

私たちとそう変わらない(いわゆるふつうの)人が、その商品もしくはサービスを使ってみてどのように思ったのか、そのときの感情や感覚は臨場感を引き起こします。そして同じような感情や感覚を味わいたいと願った結果、その商品やサービスの購買意欲が高まるのです。

 

しかも実体験ですから、その体験を詳細まで語ることができます。その商品を使ったときの気持ちの変化、商品を持ったときの感覚、使っているときの感覚の変化など、その人の表現力が許す限りいくらでも細かく話すことができるでしょう。経験した人の主観だからこそ、単なる理屈にはない説得力を持つわけです。

 

本連載では科学を重視するのですが、それは元来、ヒトという生き物が感情や感覚に流されがちで論理的思考が苦手であることが理由でもあります。加えて、人の考えには感情や感覚の影響が大きいことも、科学的に証明されているのです。

経験則・経験談を無暗に一般化することは危険

このように私たちは、経験談や経験からその人が見いだしたこと、すなわち経験則の影響を受けます。ただし、それがいつも正しいとは限りません。実際テレビショッピングを見ていて、怪しいと思うケースも少なくないのではないでしょうか。

 

ダイエットグッズの宣伝として、それを使った経験を語る場面があったとしましょう。ビフォーアフターの写真や体重が減ったことを示す映像が出ます。しかもその経験者が、「簡単にやせられて驚きました」「むしろ楽しんでダイエットに取り組めました」などという感想を寄せたとします。

 

それらについて、素直に「なるほど」「自分もやってみよう」と思う人もいるでしょうが、怪しいと感じる人もいますよね。そういう人の多くは「これはこの人の個人的感想であって、それが自分に当てはまるとは思えない」と感じたり、「これはあくまでコマーシャルだ。商品が売れるように都合の良い話をしているんだ」と考えたりします。もちろん、こうした考えや意見は正しいです。だから最近ではこうした経験をCMで使うとき、画面の片隅に「これは個人の意見です」と注意書きがされるようになっています。

 

経験談や経験則は、感情や感覚に訴えて話す人に付随する情報があるため、魅力的ではあります。ただし逆に言うならば、その人個人の感想や経験でしかありません。しかも偶然だったり意図的だったりする可能性もあります。それをむやみに一般化して、「自分にも当てはまる」と考えるのは、相当危ないことであると考えるべきでしょう。

 

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和久田 学

公益社団法人 子どもの発達科学研究所 主席研究員

大阪大学大学院連合小児発達科学研究科 特任講師

 

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公益社団法人 子どもの発達科学研究所 主席研究員
大阪大学大学院連合小児発達科学研究科 特任講師
 

特別支援学校の教師として20年以上勤務した後、科学的根拠に基づいた子どもの支援を研究し、小児発達学の博士号を取得。専門領域はいじめや不登校など子どもの問題行動の予防、支援者のトレーニング、介入支援のプログラムなど。著書に『学校を変えるいじめの科学』(日本評論社)がある。

公益社団法人 子どもの発達科学研究所:http://kodomolove.org/

著者紹介

連載小児発達学の専門家が解説!エビデンスに基づく、子育てにおける「経験則」の使い方

科学的に考える子育て エビデンスに基づく10の真実

科学的に考える子育て エビデンスに基づく10の真実

和久田 学

緑書房

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