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社長の決断ミスは経営の致命傷になりかねない
しかし、経営が順調になればなるほど自信に溢れ、やがて慢心し傲慢になり、自分都合が中心となりお客様を忘れた社長がそこにはいる。社員、現場からの意見は耳に入らなくなり、さらに「お客様は日々変化し、目が肥え、新しいサービスを体験し、歳もとっていく」現実を、社長自身が自分の足と耳と目で実感しない限り、次代を担う商品もサービスも生み出せるものではない。
「社長の居場所は常に市場、お客様のところになければならない」とした一倉社長学の原則は、時代を超え不変の哲理なのである。
あるときは、大手メーカーの下請けで赤字に転落したA社長からのSOSを受け、「工場のコストダウン政策では潰れてしまう!」と檄を飛ばし、嫌がる社長とともに販売店の店頭訪問を繰り返し、高級ラインの商品開発と値上げ要請、自主販売の具体策を講じた。また、不渡り事故で資金難に陥りそうになった社長と経理部長を川崎の自宅に呼び、休日を返上し深夜に及ぶまで資金対策や銀行対策に心血を注ぎ、何としても会社を守り抜くための手立てを考え、実行させ続けた。
全ての権限を社長に集中させ、怯懦(きょうだ)になる社長の背中を押し、強烈なトップダウンで血が流れようと幹部が反対しようと、会社存続のためには泣いて馬謖を斬ることも断行させたのである。
オーナー社長が圧倒的に多い中小企業の経営は、大手企業とは根本的に違う。
社長の在任期間も20~30年と長く絶対的な権力を持ち、ナンバー2、後継者、経営幹部といえども反対意見は言いづらく、社長が暴走し始めたら止められないのである。
派手な遊興や政治活動、名誉職、情実人事などは論外だが、大型の設備投資や新規事業への資金投入、衰退事業への固執やテコ入れなど、社長が陥りやすい経営戦略の決断ミスは致命傷になりかねない。
ましてや危機に陥ったときには、実際のところ金融機関の支援は期待できない。親族といえども雲散霧消し、社長が全財産、全人生を賭して生き残る道を探ろうにも、誰一人相談に乗ってくれる人もいなくなってしまう。
だからこそ常日頃から絶対に倒産しない会社にするために、一倉先生は溢れんばかりの愛情をもって、社長を叱り飛ばし、ときには鉄拳を辞さない覚悟で「正しい社長の姿勢」を生涯説き続けたのである。
ネットやアマゾンのお陰で社長が勉強する環境はこの20年で激変した。国内はもとより、アメリカの最新情報だろうが、アジアの流行だろうが、瞬時にアクセスできるため、かえって社長自身が混乱し経営の軸を見失っているように見える。