日中に襲われる強烈な眠気、会議中あるいは作業中に意識が飛ぶような感覚。多くの人が日常で感じているこれらの症状のなかに、単なる眠気や疲れとして見過ごせない、深刻な問題が潜んでいるケースがあるのです。スタンフォード大学医学部教授が、睡眠トラブルの問題について警告します。※本記事は、スタンフォード大学医学部教授・西野精治氏の著書『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』(PHP研究所)より抜粋・再編集したものです。

海外旅行では「現地の昼間に寝るな」というが…

海外旅行で、いくつかの国や都市を転々とすると、自分の身体のリズムがどこの時間に合っているのかわからなくなることもあります。そのときには、体温を意識してみてください。

 

朝、活動をはじめるときには朝食をしっかり摂るなどして、深部体温を上げると共に、視交叉上核の体内時計だけでなく、身体の末梢体内時計も反応しやすくなるようにする。逆に、夜は深部体温を下げることを意識する。

 

よく「できるだけ現地の昼間寝るな」などといいますが、深部体温が下がっていたら、身体が活動モードに入りません。そういうときは、日中でも短時間の仮眠をとったほうが体調もパフォーマンスもよくなります。

 

短期の出張でれば、時差をあまり意識しない、無理して現地時間に合わせようとしない、という逆説的な方法もあります。

 

たとえば4〜5日程度の出張や旅行ぐらいなら、現地時間に合わせない。大事な商談、プレゼン、あるいはいちばん楽しみにしているイベントなどがある時間、そこで自分がしっかり集中できるよう、調子がベストになるように、コンディションを調整すればいいわけです。

 

大事な予定のある日は、短時間の仮眠でもよいので、疲れることのないように睡眠をとり、自分がもっとも効率よく動けるように準備を整えます。大事なことは、睡魔が襲ってきたときには状況が許す限り、少しでもいいので眠ること。長時間寝てしまうと睡眠慣性が起こり、仮眠の後、頭がすっきりしないことがありますから、短時間でいいのです。

 

光を浴びたり食事をしたりして身体をしっかり覚醒させ、余裕をもってその予定に臨む。その旅の主目的最優先のスケジュールで動くのです。

 

こう考えるようになったのは、私自身、失敗談があるからです。学会出席や講演などで日本に戻ってきたとき、やはり時差の影響でものすごく眠くてたまらないことがあります。しかし、せっかくのコミュニケーションの機会でもあるので、「寝たいから」とはなかなかいいにくいことがあります。

 

あるとき、主催者がホテルを手配してくれたので、海外からの招待者全員が同宿になりました。そして気を利かせて、ホテル内の有名な天ぷら屋さんでの会食をセッティングしてくださったのです。

 

海外からの招待者は、このもてなしを非常に喜んでいました。私は時差のために眠くて仕方なかったのですが、日本人として天ぷらの説明などをして、最後まで会食につきあいました。その晩、私は胃がもたれてまったく眠れず、結果的に翌日の講演は頭がぼうっとして自分でも何をしゃべっているのかわからない状態になり、さんざんの出来でした。

 

以来、大事なプレゼンや講演の前夜は、なるべく無理な予定を入れないように気をつけ、目的を最優先させるようになりました。

 

国際大会に出場するスポーツ選手も、遠征の際は時差に苦しめられるといいます。

 

時差をどう乗りきるかは、自分が最高のパフォーマンスを発揮するために、何を大事にするかという優先順位の問題です。

 

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スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣

スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣

西野 精治

PHP研究所

睡眠とは単なる休息ではなく、あらゆる生命現象の基盤である―。世界最高峰といわれるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長が、「脳の老廃物を洗い流す『グリンパティック・システム』」などの睡眠研究の最前線から、「…

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