パートナーに自分勝手な期待はするな
2.言わなくても気づいてほしい
産後の妻は常に寝不足です。せめて赤ちゃんが眠っている間は一緒に睡眠をとりたい……。ところが現実はお皿洗いや洗濯、掃除と、やらなければいけないことが盛りだくさん。心のなかで「ああ、夫が少しでも手伝ってくれれば睡眠時間が確保できるのになあ……」と思っているはずです。
しかし、妻はそれを素直に口には出せません。なぜなら専業主婦、あるいは育児休暇中の場合「自分は稼いでいないから、せめて家のことはやらないと」という気持ちがあるからです。たとえ働いていても「家事は妻がするもの」という常識に縛られる女性は少なくありません。そうして一気に不満が溜まり、あるとき急に爆発してしまうのです。
「ねぇ! なんで私がこんなに必死なのに気づいて手伝ってくれないの!」ところが夫は、そこで初めて妻がそんな不満を抱いていたことに気づくので、ついこう言ってしまいます。「なんだよ急にそんなこと。思ってたならもっと早く言えばいいのに」
この言葉はさらに妻を怒らせてしまいます。夫からすれば軽い気持ちで口にしたのでしょうが、「私が大変なことくらい、見ていて分からないの⁉ なんでそんな嫌味を言うことしかできないの ⁉ 」と、またまた怒られてしまいます。こうなると、ひたすら謝る以外に方法はありません。
このように、たいていの夫婦喧嘩は「相手にこうして欲しい」と望んでいるのに、そうならないという期待はずれから起こることが多いもの。妻は「なんでうちの夫は言う前に動いてくれないのかしら」とイライラする。
一方、夫は「そんなに怒るくらいなら最初から言えばいいのに。なんでうちの妻はこうなんだろう……」とモヤモヤする。しかし、自分と違う意見を持っている人に対し、期待をしてもただ生きづらくなるだけです。
繰り返しになりますが、女性は共感してほしい生き物なのです。ここで反論しても仕方がありません。「うんうん」とうなずきながら、とにかく妻の話を聞きましょう。誤解を招くかもしれませんが、ときには「聞き流す」くらいの気持ちでいたほうが楽でしょう。そして、ポイントは「何も言わずに優しくサポートをすること」、これに尽きます。
東野 純彦
東野産婦人科院長