歯によいはずの「キシリトール」でむし歯に…!? 歯科医が警鐘

歯によいはずのキシリトールが原因で、「むし歯」になってしまった!? 歯科医師でありながら起業を成功させた齊藤欣也氏が大企業の体質と、それに対抗するための戦略を語る。 *本記事は齊藤欽也氏の著作『レッドオーシャン革命 常識破りのマーケティング戦略』(幻冬舎MC)から抜粋、再編集したものです。

大手企業が「偽物」の商品を量産する!?

以前、「ベンチャー企業は大手企業と組むな」という趣旨のことを述べました。実は筆者が大手と手を組むことを戒めるのは、自分が過去に苦い経験をしたことがあるからです。

 

筆者は昔から起業に関心があり、色々と試行錯誤をしてきました。そんな中で、20年くらい前に当時すでに「むし歯予防大国」として有名だったスウェーデンで勉強をした経験から、キシリトールを使ったむし歯予防に役立つお菓子の開発を試みたことがあります。

 

筆者の地元である静岡県は、ご存じのようにお茶の産地です。幼稚園や学校では、むし歯予防やインフルエンザ予防のためにお茶でのうがいを推奨していました。

 

そこで筆者は子どもたちに喜んでもらおうと考え、本物のお茶の成分エキスとともに甘味料としてキシリトールだけを配合したグミとチョコレートを作り、むし歯予防のお菓子として販売したのです。

 

ところが、その事業はあえなく頓挫してしまいました。それは、追随してきた大手の商品に負けてしまったからです。

 

相手の会社は原料コストを下げ、商品価格をすごく安くして発売してきたのです。本物のお茶の成分を抽出するのではなく、お茶のフレーバーを使い、しかも、甘みとして100%のキシリトールだけでなく、ほかの合成甘味料を使っていました。

 

そのようにしたら、「お茶とキシリトールだから歯によい」という本来の商品の特長は完全に殺されてしまいました。ところが、本来備わっているはずのお茶やキシリトールのむし歯予防成分がほとんどなくなっても、購入する人たちには本物との違いはわかりません。これでは、キシリトール商品として偽物というほかありません。コストダウンのために品質を劣化させる大手の「企業努力」によって、本物のキシリトール商品が幻になってしまったのです。

「キシリトール100%」の商品はほとんどない

現在は、日本でもキシリトール入りの商品が広く普及し、市場にたくさん出回っています。しかし残念なことに、ある大手菓子メーカーのガム以外に、「キシリトール100%」の商品はほとんどありません。それを知らずにキシリトール入り商品を利用していると、思わぬトラブルの元になる場合もあります。

 

筆者の歯科医院の患者さんで、毎日とてもていねいに歯をみがいているのに、すぐにむし歯ができてしまう女性がいました。彼女は砂糖を入れたコーヒーなども飲まないし、甘いお菓子も食べないのに、どうしてだろうと、筆者も不思議に思い、ご本人も困惑していました。

 

ところが、よく聞いて見ると、原因がわかりました。

 

毎朝、仕事に向かう車の中でキシリトール入りののど飴を食べていると言うのです。筆者はすぐに「それだ!」と言いました。

 

たとえ「キシリトール入り」であっても、ほかに水あめや別の甘味料を使っていれば、むし歯を抑える効果はなくなってしまいます。熱心に歯を磨いていた彼女は、キシリトール入り商品を盲信したばかりに、その犠牲になってしまったと言えるでしょう。

 

「キシリトール入り」ののど飴を毎日食べた結果……? (写真はイメージです/PIXTA)
「キシリトール入り」ののど飴を毎日食べた結果……?
(写真はイメージです/PIXTA)

 

なお、私は大手企業が常に悪だと言いたいわけではありません。利益を重視せざるを得ない大手企業では、常に価格競争力を維持するためのコストダウンが求められ、それが商品の本質を殺してしまう場合も多いものです。ですから、必要に応じて注意をしたほうがいいと言いたいのです。逆に、大手企業が逃れることのできないそうした傾向は、新しい事業を興そうとしている人にとって、「相手の弱点」にもなると言えるでしょう。

「本物」を本物ならではの価格で、世に問う

仮にあなたが、大手企業の既存商品がひしめくレッドオーシャンで起業を考えているとします。そのとき、考えられる方法は大きく2つあるでしょう。

 

ひとつは、今までになかったような商品、ライバルとはまったく異なるコンセプトの商品を開発して、消費者に新しいライフスタイルを提案することです。

 

そしてもうひとつは、既存商品や類似品をできるだけ安く仕入れ、安く売ることに活路を見いだす方法です。流通系での起業には、このタイプのビジネススタイルが多いのではないかと思います。

 

しかし、レッドオーシャンでしのぎを削っている商品は、たいてい最大限の企業努力ですでにコストダウンされていると考えられます。その中で、果たして普通に「価格が安い」という優位性を打ち出すことができるのかどうか疑問です。

 

場合によっては、かなり「無理」をする必要もあるのではないでしょうか。例えば、卸業者さんに無理な値引きを強いるとか、特注で品質を落としてコストを下げるといった方法です。

 

念のためまた言いますが、私は「よいモノをより安く」というビジネススタイルを否定しているわけではありません。これからレッドオーシャンでの起業を考えている人たちに、「価格勝負だけで起業する意味は、それほどないのでは?」と疑問を投げかけたいのです。

 

必死になってコストダウンの努力をしたからといって、レッドオーシャンで勝ち残れるかどうかは保証の限りではありません。それならば、今までになかった「本物」を、本物ならではの価格で世に問うほうが、より明確に独自性が打ち出せるのではないかと思います。

 

ちなみに、筆者たちが開発した乳酸菌ハミガキ粉は、1ヵ月分が約8000円します。これは、自分たちが「本物」と考える商品を、本物ならではの適正価格で、誰にも無理を言わずに提案しているということなのです。

 

筆者にとってのブルーオーシャン開拓ーー。それは、既存の市場の中にも、新たな「本物」の市場を創ることができるのではないか、という考え方なのです。

 

せっかく事業を起こすからには、自分が世の中のために何をしようとしたのか、後々自らが誇れるような仕事をしたいとは思いませんか。

歯科医師
ウィステリア製薬株式会社代表
社会起業家
コンサルタント
カウンセラー

1954年生まれ。明海大学歯学部卒業、1982年静岡県富士市にて歯科医院を開業し、以来36年間増収を続けている。当クリニックは、地方都市のシャッター通りの一角にあるにもかかわらず、業界水準を大幅に上回る自費率70%以上を維持し、予約の取りにくい歯科医院として多くの人に支持されている。50歳の時に、医院をビルの2階から新しいコンセプトの大型歯科医院に新築移転する。クリニック経営が順調に進む中、59歳の時、生死をさまよう大病を患ったにもかかわらず、退院後60歳にして新たな分野(大企業がひしめくオーラルケア業界)で起業し、新市場を開拓。わずか3年で驚異の売り上げを記録し、様々な分野で、独自のポジションを築いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

著者紹介

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