一方で、共同親権、共同監護という制度にも、難しい問題があるとされます。
片方の親が監護に当たる親として何らかの不適格な点がある場合にまで共同監護を認めていいのか。あるいは、子供が双方の親の環境や考え方の違いで悩み苦しんでいるときに、親の権利を双方に認めて良いのか、子供の安定は確保されるのか、とった点などです。
日本で単独親権が長く続いてきたのは、家督制度、家制度のもとで男性優位の「X家」というファミリー感が強かったこともありますし、高度経済成長期以来、男性の長時間労働、女性は家事労働といった役割分担のもとで、ベビーシッターなどの人件費も高額な社会背景の中、実際に男性が子供を引き取ることは困難であったという社会的な背景もあるのであろうと思います。
そう考えると、単に、主要各国がそうだからという理由で共同親権が是、単独親権が否ということもできないと思います。実際、諸外国も、「共同親権」を原則とするだけではなく、共同にするか単独にするか選択制となっているところも少なくありません。
このように考えると、
①子どもにとって双方の親に接することが利益になるような場合には共同監護を認める、あるいは共同監護的なことができるように単独親権の制度のもとにおいても十分な面会が確保される、
②一方で、子供にとって双方の親を関与させてしまうとかえって子供が苦しい立場におかれるような場合には,やはり一方の親のもとで安定した環境が確保されるようにし、面会は可能な限りで行われるようにする
というのが本来の理想的な手段であるのだと思います。
「単独親権」の制度は、これに対して現在違憲訴訟が進行中でもあり、今後目を離せない論点です。
水谷 江利
世田谷用賀法律事務所 弁護士
※追記(2020年8月19日)
当記事は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・編集部にて再編集したものです。また記事の内容は、著者が特定の見解を持っていることを示すものではありません。