産後の夫婦関係はその先何十年を左右する。日本では「産後うつ」になる女性が30%を超えるが、男性のサポートが得られなかったことも大きな原因だろう。産婦人科院長を務める著者が、夫婦で仲良く過ごすための男性からの働きかけのヒントを伝授する。本連載は、東野産婦人科院長の東野純彦氏の著書『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)から一部を抜粋した原稿です。

男女のミスコミュニケーションは「言葉」に出して解決

可奈子さんは、すぐに自分が怒っている理由を分かってくれない大吾さんに対して「この人に何を言っても無駄」と諦めモード。こうして、コミュニケーションの遮断が起きてしまうのです。

夫からすると、「助けてほしい」「こうやって手伝ってほしい」と言ってもらえればそうするのに、言ってくれないから分かるはずがありません。

 

東野純彦著『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)
東野純彦著『知っておくべき産後の妻のこと』(幻冬舎MC)

しかし可奈子さんは「外食しよう」と伝え、「惣菜コーナーを見ている」ことで「今日はごはんを作りたくない」というメッセージを発していたつもりなのです。

にもかかわらず「から揚げが食べたい」と言われた。つまり「自分がから揚げを作るしかない」と受け取ったのです。

 

もちろん大吾さんはそこまで完璧を求めてはいませんでしたが、母親になり、家事に対して責任感を持っている可奈子さんは「自分がやらなきゃ」と思ってしまった。

さらにいえば、妻は夫に、父親として母親と同じレベルの意識改革を期待しています。

それなのに、妻の様子や家庭の状況と関係なく「自分がやりたいこと、食べたいもの」をいってしまう夫に対して「協力する気がない」とがっかりしてしまうのです。

 

このような男女の間によく起きるミスコミュニケーションは、たった一つの方法で解決できます。それはお互いの状況を共有し、「どうしてほしいか」をはっきりと言葉で伝えること。すごくシンプルですが、男女の違いを理解していないと「それが必要である」ことに互いに気づけません。でも、気がつきさえすれば、誰でも実行できます。

 

もしも妻から「食事を作りたくないときもあるから、そのときは外食しよう」とか「愚痴や弱音を聞いてほしいときがあるから、そんなときは異論を唱えず、ただただ受け止めてほしい」という気持ちが聞けていたら、おそらく夫の反応は違っていたはずでしょう。

しかし、女性がそのように振る舞えないのは、産後、心も身体も疲弊していてそれだけの余裕がないからです。男性に求められているのはその状況を理解し、大変さやつらさを察してあげられるように努めることです。

 

それでも、男女は違う生き物ですから、完璧に相手のことを察することなど不可能です。

だからこそ夫は、妻に対して「大変なときやつらいときには気がつけるよう最大限努力する。でも、気がついていないときは言葉にして教えてね」と伝えてほしいのです。

気恥ずかしい面があるかもしれませんが、このシンプルなコミュニケーションを意識するだけで、夫婦喧嘩の回数は格段に減るはずです。

 

東野 純彦

東野産婦人科院長

知っておくべき産後の妻のこと

知っておくべき産後の妻のこと

東野 純彦

幻冬舎MC

知らなかったではすまされない「産後クライシス」―― 産後の妻の変化、訪れる最大の離婚危機…… カギを握るのは夫の行動!? 女性の生涯に寄り添ってきた産婦人科医が伝授する夫婦円満の秘訣とは

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